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レジェンド 狂気の美学のマーチのレビュー・感想・評価

レジェンド 狂気の美学(2015年製作の映画)
4.2
《特集:実話ベースシリーズ
〜実在した人物、波乱の人生篇〜》

今回の特集は、実話ベースの作品の中から特に「波乱の人生」を生き抜いた人物を描いた3つの作品をピックアップしてお送りします。


[第3弾:クレイ兄弟]
【上半期鑑賞映画寸評:2017】

《冷血の絆》

「ギャング同士の抗争が勃発してドンパチに次ぐドンパチ!」を期待していると肩透かしをくらいます。あくまで実話を基にした兄弟の話なので、割と淡々とゆっくり進みますし、ド派手な戦いもほとんどありません!あるのは兄弟喧嘩とかですね…笑 一人二役の兄弟喧嘩なので、かなりの驚きと技術の進歩を感じます(о´∀`о)
危険な匂いのする兄弟の牛耳る裏社会、その匂いに魅力を感じ、吸い込まれていく女性。儚い結末…

ところでトムハといえば、最近だと『マッド・マックス 怒りのデスロード』のイメージが色濃い影響で、野生的な役柄が多いというイメージが定着しているような気がしますが、今作のようにスタイリッシュな役も滅茶苦茶似合う♪(๑ᴖ◡ᴖ๑)♪

つまり、“野生的な勇ましさ”と“スタイリッシュな高貴さ”の2つを併せ持っており、野生的な役柄の時は繊細さを内包し、スタイリッシュな役柄の時は野生を封じ込めつつも偶に垣間見せる…己の格好良さを操ることができる数少ない俳優のうちの1人であるとともに、「男」としての魅力が半端ない…とにかく何をやっても見惚れるほどの男らしさに溢れています。

トムハを褒めちぎった訳は、今作における彼の演技の説得力の凄さでしょう…かつてこれ程までに完璧な「一人二役👥」があったでしょうか!!

私の中では現時点歴代最高の一人二役ではないかと思っております! なぜなら二人が全くの別人だからです( ̄Д ̄)ノ 顔は同じはずなのに、表情・話し方・性格・歩き方が全く違うのです。それだけ繊細に気を配って演じ分けているのでしょう…そこには確かに全く別人のクレイ兄弟が二人いたのです。

そして兄貴とその奥さんの関係性がまた切なくて、🍋檸檬の飴🍬を通じて描かれた甘酸っぱくも純粋…しかし一筋縄ではいかない恋模様。結婚後に迎えた夫婦関係の悲劇。あくまでクレイ兄弟の栄枯盛衰を軸に展開していますが、個人的には兄貴と奥さんの内面的な移り変わりを観て欲しい…苦しいし、切なくなるけどそこには悲劇の全てが詰まっている。

原作の副題は「冷血の絆」、邦題の副題である「狂気の美学」も強ち外れてはいないので別に構わないのですが、兄貴が最後に起こした事件とそれが示唆していることは血で血は争えないし、どれだけ嫌な奴でどれだけ気にくわないことがあっても、二人は冷血の絆で否応無しに繋がっているということ。それは悲劇などでは無く運命(さだめ)。兄弟ってそういうもんだし、ギリギリのラインでヒリヒリするもどかしい繋がりでもある。その血の繋がりによる不変さや、際疾いもどかしさが生み出す真実を映し出した、静かな狂気に満ち溢れた作品。

彼らはロンドンのこの街で、今もレジェンドであるに違いない。


【p.s.】
今月で2017年上半期も終わりを迎えるので、その前に投稿できていない1〜6月の鑑賞作品を寸評で投稿しています。

40〜50作品ほどありますので、いつもとは違い極々短いレビューで投稿しますが、暇があれば付け加える予定です。

よって、いつもの【映画情報】等もカットさせていただきます。

*詳しくは2017年6月8日に投稿している《『イップ・マン 葉問』評》内の【p.s.】後半部分をご参照下さい。
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