シミステツ

ビューティー・インサイドのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

ビューティー・インサイド(2015年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

毎朝目覚めると違う自分、違う顔。恋に落ちるのは顔なのか中身なのかという分かりやすいテーマ。設定が完全ファンタジーなのに感情移入できるのも、発覚当時に母が病院ではなく家に連れて帰ってくれたことだったり、不安に苛まれる中、親友が笑い飛ばしてくれたことなど、違った顔で生きていくまでの部分をモノクロよりのセピアでリアルかつ丁寧に描かれている点や姿形に合った靴のサイズ、装飾品、服、視力もまちまちだから眼鏡も合わせてなどの描写も実生活のリアルさを付与していた点があったから。こうしたマインドセットから恋愛に入っていくまでの感情の動かし方などバランスの良い印象の映画。

イスとの出会いのシーン、木材が船になったり椅子になったり不思議ですよねと話していたのがウジンのことを言っているようで象徴的なシーン。

毎日姿を変えて訪れるウジン。どんな姿でも態度を変えないイス。好きだと言ったとしても明日は違う顔になる不安。同じ顔をキープするために寝ないで過ごして毎日イスに会いに行くというのが、いつまでもこうしてられないことを分かっていながらもせめて幸せな瞬間を過ごしたい儚さみたいのも伝わってくる。

4日目の朝、姿が変わってしまい会いに行けず。チェギョンという女性の姿でイスに会い、自分はウジンだと伝えるも、もう二度と会いたくないと言われてしまう。変わってしまった自分を初めて見た母もサンベクも同じ顔をしていた。見慣れた表情。慣れたものだったけど。

上野樹里の姿になったウジンが日本語で「好きだよ」って言うのが泣けた。イスは一夜を過ごして朝こっそり先に起きると、ウジンの部屋には男女さまざまな服や眼鏡、靴の採寸器などがあり、姿が変わる様をリアルに感じる。

思ったよりも早く姿が変わる自分を打ち明けて理解してもらうところまできたので、後半1時間でどう盛り返していくかというのがこの映画の見どころだけど、見た目だけではなく匂いや感触で感じるようになりたいって話だったり、二人の世界だけではなく周りの人間にどう受け入れられていくのか、姿形が違うことで生まれる愛の障壁(待ち合わせで電話しても言われないともはや姿は分からないからふざけないでとか、イスが男を取っ替え引っ替えしてるという誤解が生じていること、家族は受け入れてくれるのか)へストーリーが進むので、監督はきちんとリアルというか地に足ついた毎日としての愛を描きたかったんだろうなと思う。

ラストのシーンは泣けました。

個人的にはイスにとってのウジンがいなくなってから、街ゆく人々から聞こえる些細な言葉から何でもない人をウジンかと疑ってしまうようなシーンだったりとか、それでも違う姿の人が次々と現れる中で言葉の節々でウジンを感じられるシーンが重なって、あの、もしかして、いや、違うよね…みたいなイス側からの歩み寄りだったり、違う姿になったウジンは違う姿としてイスに会うだけでいい、それ以上近くになると辛いからみたいな揺れ動き、ねえウジンなんでしょ、言ってよ→人違いですよと、正体を言わないまま去っていくウジン、みたいなのが前半から中盤に一山あったらめちゃくちゃ良かったなって思っています。後半はサンベクがイスに会いに行き事実を吐露してやっぱり…ってなってどうにか二人を突き合わすなどなど。

これから本格的に食べるぞという合図に食べてる途中に髪を結うイスというキャラ付けもかわいいし、2人の誠実な様子も伝わってきて好感が持てる。

「世界で一番たくさんの人に愛される女性」って捉え方は素敵だと思う。

イスが父に母が生きていたらしたかったことを問いかけ「一緒に年を取ること。お前の母さんはあの時のままだ」と言ったのがクライマックスに鍵となるシーンでした。

「私はこの中のキム・ウジンを愛してるから」