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ビューティー・インサイドのardantのレビュー・感想・評価

ビューティー・インサイド(2015年製作の映画)
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映画が残り1/4程度になった時、そのシーンは現れる。
女との関係がうまくいかなくなった男が、自分の母を訪ね、悩みを打ち明ける。その時、母は、失踪した夫、すなわち、男にとっての父のことを告白する。そして、男は自分の体の変化の出自を知ることになる。
私はそのシーンを観ながら、このシチュエーションがある映画とそっくりではないかと感じた。自分が化け物ではないかと恐れおののく男の子、その苦悩を知りながら何もしてあげることのできない母親、そう、ナイト・シャラマンの傑作『シックス・センス」(99,米)の母子とそっくりではないかと。そうだとすると、ブルース・ウィリス演じる精神科医の役目は、恋人である彼女が担わなければならないことになる。
しかし、この作品の結末は、平凡なものとなってしまった。彼女は、彼への想いにより自らの不安を克服し、異国に住む彼を訪れることで、一度は閉じてしまった彼の心の扉を開いていく。そうして、彼の「覆われていた哀しみの霧」を取り払ってしまうのだ。
しかし、それは、同時に、私の心の片隅にかすかに芽生え始めていた「この作品は傑作になるかもしれない」という希望をも、急速にしぼませてしまうことになった。
だが、そのありふれた結末は、観る側の大多数が望んでいたことのように思えるのだが。
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