火星ぐらし

はじまりへの旅の火星ぐらしのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
-
理想の敗北?まさかそんな風には描かれていない。
キリスト教に結び付いた高度資本主義消費社会(「何でも揃えてますよ~」)の欺瞞に対して、自由を求めた母をいかにして看取るか、という話。家族で過ごした時間に対して正直な彼らにとって、母の亡骸を墓土から掘り出し、晴れた海へと炎を上げて音楽と共に弔うことには何の嘘もないのだった。

まずもって、一つ一つのシーンが美しすぎる。とりわけ最初の焚火と最後の火葬で二度立ち上がる民俗的セッションのシーンには、無限の時間が流れている。『Sweet Child O'mine』に歌われる青空のような底抜けの明るさが全編に満ちており、彼らはいかなる苦難においても最善の選択をする。辿り着いた先にあった生活が静かな朝食の時間として切り取られるとき、「理想」の家族生活は遂に祝われ、他のあらゆる抵抗の試みへと賛歌が贈られるだろう。私たちがこの社会において作るべき「群れ」の生活の形がそこにはあるのだ。
火星ぐらし

火星ぐらし