合縁奇縁

はじまりへの旅の合縁奇縁のネタバレレビュー・内容・結末

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「どこを見渡しても雄大な自然が広がるアメリカ北西部。電気やガスはおろか、携帯の電波さえ届かない大森林の中で、自給自足のサバイバル生活を送る奇妙な一家、父親ベン・キャッシュと6人の子供」たちが遠く離れた実家で病気療養中の母親の死の知らせを受け葬儀のために5,000kmの旅をする。原始人のような生活からいきなり「普通」の中に出ていくことによるズレが時に笑いを時にその「普通」を撃つ。しかしながらその「普通」の圧力で家族はその絆を失いかけるが・・・というあらすじに沿った感想もいいですが、私には最初から最後まで不在の妻であり母こそが陰の主役だと思った次第。そもそもベンは愛する妻のためにこのような生活を選んだとも言えるのであって、その妻の死に直面したときにどのようにその死を受け入れ乗り越えられるかが最大の課題となった。もちろん未来ある子どもたちにとっても同様。この映画はそのような大きな喪失感と哀しみを前にして乗り越えるためには、その哀しみを共有するみんなで一つの目的に向かって突き進んでゴールすることだということを教えてくれている。だから遺体を取り戻し火葬にしたときこの家族は確かにその死を乗り越えたという祝福に満ちていたんですね。そして遺灰をトイレに流し終わった時に発するナイの「さよなら、ママ」っていう言葉のふっきれた爽快感にこそのこ映画の全てが凝縮されていると言ってもいいかもしれません。
ところでこの映画ではベンが敬愛するノーム・チョムスキーさんの名前が出てきますので、著名な言語学者ということはもちろんですが、権力への批判をし続けている不屈の88歳学者の言葉を知っておいた方がいいですね。
下記の日本に関しての発言がわかりやすくていいかもしれません。
https://www.youtube.com/watch?v=wbUqrajckxs
合縁奇縁

合縁奇縁