国分蓮

はじまりへの旅の国分蓮のレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
4.5
【世にもおかしなヘンテコ家族のロードムービー。彼らにとっての"普通"が、観る者に生きる力を与え、人間に秘められた無限の可能性を感じさせてくれる、まさに教科書のような映画。】

あまり期待しないで観に行ったんですが…いやぁ、ホント面白かったです。
簡単に自分の挙動を振り返ると、笑って笑ってさらに笑って、笑いすぎて涙が出てきたんだけど、一方で別の涙も出てきて、最終的に思いっきり泣かされる。という、喜怒哀楽をフルに要求される映画でした。

ヴィゴ・モーテンセンが演じる一家の大黒柱的な父親ベンのスパルタっぷりがヤバいです。
子供達に、6ヶ国語必須、著名な小説はもちろん、哲学本やら歴史本やら宇宙本を読ませたり、性教育を抽象的な表現を用いずに(コウノトリ?ハハッ)しっかり教えたり、走り込みやウェイト、クライミングなどの過酷な肉体トレーニング(筋力は一流アスリート並)を課したり、ナイフを使った格闘術を教え込んだり、食べ物は各自森で動物を狩ってさばいて調理させたりと…父親としても教師としても一切の妥協を許さない鬼教官のような振る舞い。
全員サスケ優勝レベル、究極の文武両道ファミリーなんです。
おそらく世界がなんらかの理由で崩壊しても、この家族だけは生き延びている気がします。笑

子供達もそれにきっちり応えてくるところ、みんな芯があってたくましい、強い。
しかし、ただ教養を身につけるだけでは意味がないと思ったベンは、常にそれについて、自分の言葉で説明するように子供達に説く。

自分のことは自分で。
自分の言葉で、自分の意見で。

良いですね。
知識だけ得たって自分の言葉で語れなかったら何の意味もないですからね。
この教育があるからこそ、子供達はまだ幼いのにすでにみんな独立しているような貫禄すらあります。

旅の途中で、「普通」は実は「普通」ではないことに気づき始める子供達ですが、ベンは「普通とは何か説明してみろ、俺が納得したら考えを変える」と強気です。
確かにそうですね。
そもそも普通という言葉が曖昧すぎてわからない。
一人が望んだ普通が、他の人の普通ではないかもしれない。
基準もなければ定義もない。
難しいです。
ベンを納得させられるだけの言い訳は自分にはないです。笑

観終わって感じたのは、ベンの子供達に対する愛と子供達のベンに対する愛。
子供達は、ベンのやりすぎな教育方針に楯突いたこともありましたが、根底にはしっかりと愛がありました。
これが涙腺崩壊するところです。

「個性は消せるか?NOッ!!!」
「今日は人生最後の日だと思って生きる。」

心に響く言葉がたくさんの映画。
ミニシアター系で上映期間も短めですが、是非観て欲しい一作。受験生が観たらさらにやる気が出るかも。この映画は生きるための教科書のようなものでした。

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Scotland the brave(勇敢なるスコットランド)のロックバージョンは斬新だった。
この曲が普段どういう場で流れるかを知っておくことでよりそのシーンを楽しめるような気がします。
国分蓮

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