スズタカ

はじまりへの旅のスズタカのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
3.4
非常に、危険な映画だと思いました。

あらすじは、一般社会と隔絶された、森深くで生活している父親ベンと、ベン独自の方針で育てられた6人の子供たち。

入院していた母親が亡くなり、ニューメキシコで行われる葬儀に参列するため、自家用バスで2,400キロの旅に出る…というお話です。

事前の予想では、何にも持っていない彼ら家族が、都会で暮らす人達が失ってしまった大切な何かを持っていた…というような、クロコダイル・ダンディ的な、感動カルチャー・ギャップ・コメディかなと思っていましたが、それが主題ではなかったです。

確かに、家族以外の人間と接することなく、電気もない自給自足の彼らと、都会の人たちとのカルチャー・ギャップ表現は、めちゃくちゃ面白かったし、最高に笑えました。

中盤で、彼ら家族の在り方を逆手に取って、学校教育への問題提議をしている辺りまでは、まだ一般的な面白い映画ですが…彼ら家族の行為は、窃盗やその他諸々、常識外れであり、とんでもない犯罪です。

であるにも関わらず、観ている最中は、愛さえあればオールOK!なんて、安易な考えに陥りそうになる。

表面上では、コメディタッチで笑わせたり、家族愛で感動させながら、その実、幸せとは何なのか?善悪とは何なのか?と、核心的な問いかけをして、観客の常識や倫理観を揺さぶっている、と感じました。

見た目は、単なる、ちょっと変わった家族愛の映画に見えるだけに怖い。

大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、単純に感動したとか言ってられない映画だな、と俺は思いました。
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