SPNminaco

はじまりへの旅のSPNminacoのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
-
俗世間から離れての自給自足生活はプレッパーではなくて、ガチでもなかった。何が有りで何が無しか、所詮マイ・ルールなので都合良く曖昧だし、最初っから負けブック。けど映画はそんな理想と矛盾を人間らしく誠実に見せ、客観的にはダメな父ちゃんなんだけどどこか憧れも誘う。如何にもクールな自由人らしいヴィゴ・モーテンセンだからこそ、その弱さ脆さが滲み出る演技の余白が素晴らしかった。特に、初めて本名を呼ばれ、キャプテン・ファンタスティックの虚像が剥がれる瞬間が心憎い。子供それぞれの立ち位置もハッキリ描かれて、長男ジョージ・マッケイの寄り目の切迫感たるや。身体張った子役には若干ハラハラしたけども。
そして、決して挫折や敗北の物語じゃないのも良い。子供たちの葛藤と成長含め、一面的なジャッジはしない。正しさよりむしろ、間違いを認めたり答えに迷い続けることこそ健全であると。なので、あのラストショットがお見事!!『卒業』と同じ意味で長い間にある含みがたまらない。(そういえば教会の所から既に『卒業』の前フリか)
『ライフ・アクアティック』と併せて観たら、ヴィゴ父ちゃんがものすごく良い父ちゃんに思えそう。
SPNminaco

SPNminaco