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はじまりへの旅のkouのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
4.0
《普通ではないが、それこそが個性》
監督マット・ロス、主演ヴィゴ・モーテンセン。社会と距離を取り、森のなかで暮らす父親ベンと6人の子供達。彼らは父親の訓練と教育で高い身体能力と知識を持っている。ある時、妻の訃報を聞き、彼らは妻の葬儀へ出るためニューメキシコまでの旅へ出る。

10年間の森での生活のため、社会から閉ざされていた生活から、再び社会と関わらざるを得なくなる。子供たちはそこで外の社会の様々なことを、初めて見聞きするのだ。今作では彼らが普通だと思っていた世界から、いざ外へ出てみると普通ではないことに気づく。彼らの日々は生命の尊さを知り、自分で生きるすべを知り、そして自ら学ぶことをしているとても素晴らしい教育法であるのだが、外へ出てみると普通じゃない。その辺のティーンエージャーは学校へ嫌々行き、テレビゲームをして、コーラを飲み、そして異性との恋をする。今まで生きてきた状況と、世間の普通の不一致は混乱を生む。

もちろん、彼らの生活はとても理にかなっていて、生きていくのにそれ以上ない生活なのだが、限定されたコミュニティでは得られないものもある。外の社会に出て混乱する子供たちを見て、父親ベンは自分が行ってきたことは正しかったのか自問する。

普通ではない事はとても勇気がいることだ。子供たちはいつしか自分の環境が普通でないことに外に出ることで気づく。ただそこで、彼らは選択することができるのだ。自分の選んだ先、それはとても強い個性になる。終盤、そんな個性を表現するように、意外なある曲を家族で歌うのだが、とても感動的で、素晴らしかった。さわやかな感動に涙が出てしまった。家族と愛についての映画で、とても面白い作品だった。
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