カント

はじまりへの旅のカントのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
3.9
自然派コミュニスト一家の滑稽劇&ロードムービー。

社会と隔絶し、悪しき文明を遮断して森で暮らす一家。前半、父親の教育方針を見るだけで社会性や協調性の欠如など…尾木ママなら10以上の指摘をしそうだ。

▼父親ベンと6人の子供達。
狩りで獲物を仕留め、夜な夜な書物を紐解いて諸法の真理を考察する。例えば宇宙ひも理論や量子もつれ、アメリカ議会の法制、判例、高等数学、古典文字などなど。
時には手に手に楽器を持ち合い合奏し、アナーキストの哲学者ノーム・チョムスキーを敬愛する一家。 

▼ママが死んだ。自殺だった。義父はベンを毛嫌いして葬儀に来れば逮捕すると。ママのレスリーは仏教徒だったのに、キリスト教の柩に入れられて土葬されてしまう。

葬儀に乗り込んでママを取り返そう!バグパイプの名曲「スコットランド・ザ・ブレイブ」の勇壮な調べと共にスティーブ号(一家のバス)で2400キロを走破する。
ベン一家はママを取り返せるか。

▼ママの手紙には『主人は、プラトンの「国家」から読みといて楽園を築いたの。子供達は大きくなれば哲人王よ』と書かれていた。
「国家」によれば、国を治めるのに5段階あって最高位は哲人王の治める平和国家。現代社会で、この最高位の治世を行っている国は皆無。
古代にはインドの阿育大王が最高位の治世だった。ちなみに民主主義は5段階の内、下から2番目。
だからベンは、資本主義と民主主義を揶揄する言葉で子供達に教える。盗む事も資本主義の弊害だ、と言わんばかり。
長男ボウが、マルクス主義や毛沢東思想を崇拝しているようなので、一見コミュニストに見えるけれど、それは間違いだ。
ベンは、プラトンの理想郷を子供達に教えたかったに違いない。

▼filmarksの本作のキャスト一覧で、上から2番目にクレジットされている大女優ミッシー・パイルだけど…出演秒数わずか15秒😅
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