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はじまりへの旅のhikarouchのレビュー・感想・評価

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
3.7
何が良きこと、何が悪しきこと、というのが提示されないまま話が進むので、自分自身の倫理観を揺さぶられ続けた。

主人公のベンは、とにかく包み隠さず物事を正直に正確に子どもたちに伝えようとする。一方でベンの妻の弟家族のように、世の中の大人たちは小さな嘘を混ぜながら子どもたちを誤魔化し諭して過ごしている。この映画をみている自分も含めて多くの人が後者のはずで、本当にそれで良いのかとハッとさせられる。

一方で、分別の未熟な子供たちに思想教育をし過ぎたり、武器を与えたり、社会から隔離したりするのは、やはり児童虐待と言われるのも仕方ないとも思う。
子どもの意思を無視して、自分の正しいと思うことを押し付けているという点では、実は妻の父親が娘の遺志を無視した葬儀を行っている様と変わらなかったりする。

つまらない一般論だけど、どんなことも極端に振れすぎるのはよろしくない。

ベンがなぜこのような考えに至ったのかということが、この作品の中では明示的には描かれない。色々な断片から綜合して考えるに、妻の思想に影響を受け、その妻が病に倒れたことから、彼女の治癒とは直接関係がないと理解しつつも、自らの妻へのコミットメントとして、原理主義的な思想・行動に傾倒していったのかも知れない。それ以前のベンがどのような人物だったのかは、気になる。

この映画でもうひとつ思ったのは、親は子どもから学ぶということ。もっというと、子育ての経験が人間を成長させる。これは自分自身の体験としても痛いほどによくわかることだ。

子どもたちはみんな素敵だったけど、特に長男まわりのエピソードが良かった。恋をして(本当の意味で)世界を知り、自分たち家族のヤバさに気づくクダリや、最後にとる人生の選択も良かった。

#ヴィゴのイチモツシーンいらない
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