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はじまりへの旅のわのネタバレレビュー・内容・結末

はじまりへの旅(2016年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ヴィゴがハーパー家の方針を踏みにじったと、謝罪していたのが印象に残る。
盗みもやるし葬式にカラフルな服を着るしで、社会のルールは無視しまくりだが、ただただこの人は家族を重んじすぎていたのかなと。

作中に繰り返される、人民に力を、権力にノーを。
国家という枠組みを作るには権力が作用し、多をまとめ上げる。
子供たちからは、家族の外の多様さという経験が失われていた。つまりヴィゴは、家族自体が国に、自分が小さな国の権力そのものになってしまっていたことに気づいてなかった。

レリアンが彼に不満を持った時、自分を納得させるよう説明しろと言い放った。即ちヴィゴは、教育とは批判的思考を養う場だと分かっていた。現に彼は社会を批判的に見てそこから距離を置いた。しかし彼が国の長でありながら教育者であるということは、つまり自身が倒される可能性を育てているということだった。矛盾しているようだがこれが多様さを持つ国ということで、そうして国は循環し、社会的に開かれつつ時にその枠組みすら変えていく。ヴィゴはそんなこと考えもしない。社会は敵で、家族を思う自分は彼らにとって唯一大切な役割を果たしており、なければならない指針だったからだ。彼は、倒されてはならない絶対存在であり、彼自身の存在が矛盾となってしまった。

というので、ヴィゴの教育は結局のところまさに悪気のない、家族全員を重んじるところからくる過ちだった。それだけに和解がグッと来る。

子供たちはこれから生きるのに相当苦労するんだろうな。新しくひらかれた場所での経験が始まる。その場所にユニークであることが、彼らの存在意義になるといい。

家族も、限定的な国家でなく、社会的に開かれた場所でなければならない。
わ