晴れない空の降らない雨

クリード チャンプを継ぐ男の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

3.4
 すっかりSW7の影に隠れてしまった『ロッキー』新章。俺も、これを観るためにわざわざ『ロッキー』シリーズを借りたが、3で「なんかもういいや」となり、結局4以降はネタバレ読んで済ませた挙句の鑑賞。年内に観る予定もかなわず。
 そんな不真面目な観客にも「これはアレだな」と分かるくらい、過去作への言及やオマージュが巧みに配されていて、『ロッキー』シリーズへのリスペクトを感じた(先に観たSW7もそうだった)。その一方で、時代の変化も描こうとしている。ロッキーv.s.アポロの試合映像をアドニスがこれ見よがしにタブレットで観る。しかもその際、わざわざyoutubeのアイコンをアップで映すとか、他にもいろいろ。さらに、ロッキー含め大半のボクサーがそうであるような貧民街出身者と、アポロが遺した豪邸で何不自由なく育って証券マンになったアドニスとの対比も、そこに重ねられる。
 ただし、アドニスはアポロの妻に引き取られるまで保護施設に預けられており、そこで日常的にケンカを繰り広げていた、という設定によって、バランスをとろうとしているようだ。しかし、この意図が観客にも納得できるようになっていたかというと、かなり疑問が残る。「やりすぎ」なくらい金ピカのクリード邸の視覚的インパクトが強すぎるのか。この点をはじめ、退屈で描写不足な恋愛パートなど、脚本にはところどころ難あり。全体的には、シリーズお約束の展開を守っていて、シリーズ1作目をなぞっている感じだが。

 新・旧の違いの強調に戻ると、挿入歌の多用は挙げておきたい。ラップや幻惑的なエレクトリック・ミュージックが頻繁に挿入されていて、ロッキーが活躍した時代との懸隔を強調したいんかなと思った。しかし、これも明らかにやり過ぎで、単に制作者の趣味なのかも。BGMについては、「タターター♪ タターター♪」が、寂しげなピアノアレンジverでしか聞けなかったのが残念。

 一番感動したのは、ラストよりも最初と次の試合。な、長回しすげえ。リングの外から観客目線で撮ることで、臨場感出まくり。でも顔があまり映らないから、映画的にはダメなんかな。ラスボスとの対決は普通だった。
 そこはよかったんだけど、演出も気持ち悪いのが多かった。選手が登場するたびに「17戦連勝(ドドンッ」とか出てくるの、少年マンガかよって思った。あとウィリーしたバイク連中に囲まれてロッキー宅前でシャドウするシークエンスも意味不明つかダサい。
 で、最後の試合。試合への持っていき方がまんま1作目だったが、ロッキーと境遇が違いすぎてあまり燃えない。そのせいか試合自体も正直あまり興奮しなかったが、しかしロッキーが旧友の息子にかける言葉は、どれも素直に「いいなぁ」と思わせられた。それは、ボクシングに関するアドバイスがそのまま人生訓にもなっており、どこまでもストレートな精神論である。それでも、ロッキーの生き様をずっと見てきた人々の胸には、響くものがあるのではないだろうか。そして、アドニスの走馬灯にアポロが現われたときは少し涙腺が緩んだ。というわけで、総評は「まァまァ」といったところ。シリーズのファンなら、シリーズを思い出させる小ネタの数々も楽しめるだろう。