こたつむり

クリード チャンプを継ぐ男のこたつむりのレビュー・感想・評価

3.8
『ロッキー』シリーズ新章。

積み重ねられた40年の歴史を下敷きに。
未来へと歩む心意気に溢れている作品でありました。

しかも、歴史を真正面から受け止めた上で、過去の全てを肯定していますからね。この潔さには自分の中で低評価だった『4』すらも「ああ、あれはあれで良かったのかもしれないな」と肯定したくなるほどでした。うん。これはですね。言葉にすれば容易いですが、監督さんの器が大きくないと表現できないことだと思います。

だから、出来得ることならば。
過去の作品を鑑賞してから臨んだほうが良い作品だと思います。

ロッキーとエイドリアンの愛の形。
親友であるポーリーへの想い。
好敵手との拳と拳の語り合い。
自身の息子への想い、そして後継者への感情。

そんなシリーズを作り上げた様々な要素が。
本作では咀嚼され、違う形で芽吹いているのです。これを存分に受け止めるためには、やはり観客側も歴史を肯定したほうが楽しめると思うのです。

しかし、過去への憧憬だけじゃないのが本作。
物語の都合で生み出された主人公ですが、大切なのは生まれた経緯ではなく、どのようにして生きるか。だから、自身が生きるために拳で闘う世界を選択する様は、まさしく主人公の物語。『ロッキー』という金看板に負けじと輝きを放つ存在なのです。

また、英雄であるロッキーの老いた姿も。
目を逸らさずに、そして賛美し過ぎずに。
歴史の重みと現在を生きる軽快さを表現する選択。これらがスタローンの持つ風格と重なり合って素晴らしい相乗効果を生んでいました。

ただ、あえて難を言えば。
好敵手となるべきチャンプの身体がボクサーに見えなかったのが残念でした。…って書いてから、皆様のレビューを拝読して彼が本物のボクサーと知りました。恥。ボクサーってかなり絞った身体だという先入観で書いてしまいました…。

まあ、何はともあれ。
『ロッキー』シリーズ新章として。
新しい第一歩を踏み出した作品として満足できる逸品かと思います。ただ、『クリード2』を観たいと思うかどうか…は微妙な気がしますね。彼の物語は本作で完結していますからね。だから、次に期待したいのは『ロッキー3世』です。
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