つかれぐま

クリード チャンプを継ぐ男のつかれぐまのレビュー・感想・評価

5.0
19/6/5@新文芸座

「人生は悪くない」

「ロッキー」の1作目は、孤独を抱えた登場人物たちが寄り添って懸命に生きていく話で、エンタメ性を加味したその後のシリーズ作品とは毛色の異なる静かな秀作だった。

本作はその1作目との地続き感が半端ない。両方に登場するキャラクターは当のロッキーだけだが、主役はロッキーやアドニスというよりも「ロッキーバルボアがいる世界そのもの」。あの世界観とフィラデルフィアの街がそのまま40年近く経った、そこに疑いの余地がない出来栄えだ。

もちろん、アドニスとビアンカというキャラクターはしっかりと現代の若者にアップデートされており、ロッキーとエイドリアンのそれとは違う。が、確かに同じ世界観の中に存在していることを疑わない。本作が1作目の魂をしっかりと継承している故であろう。

ロッキーとアドニス、二人のブリッジとして音楽が大きく機能していた。二つの旋律は、異なる作曲家の手になるものにもかかわらず、劇中で見事に絡み合うマリアージュ。それが離れて近づくを繰り返す二人の関係の変化を巧みに表していた。

ラスト、美術館の階段を上る二人。
ロッキーの旋律でこのシーンが始まり、一度立ち止まってからはそれがアドニスの旋律に代わる美しさ。二人が街を見下ろして呟くのが、

「人生は悪くない」

そうだ。「ロッキー」の本質はチャンプになる「最高の」人生などではなく、「悪くない」人生を懸命に生きる話。そこに回帰する見事な着地だった。

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「クリード2」との二本立てで鑑賞。
一日二本見るのは、頭の中で両者が混ざってしまうので、あまり好きではないが、この二本(二試合か!)ならば大歓迎だ。すげー疲れたけどね。