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クリード チャンプを継ぐ男のyksijokiのレビュー・感想・評価

4.2
One Step , One Punch , One round at a time

ライアンクーグラー×マイケル.B.ジョーダンの黄金タッグがまた絶妙に素晴らしい。マイケル.B.ジョーダンをカッコよく撮る方法を知り尽くしてる。フルートベール駅での時の若々しさの影も匂わせつつ、台詞なしでモーションと少しの表情だけで感情を表現しているシーンが多くてたまらなかった。特に終盤の留置所での立ち回りと表情がすごく印象的だった。「クリード」を表題に新シリーズとして立ち上げただけあって主人公の立ち振る舞いが際立っていてそこもこのコンビだからこそできるエッジの付け方だと思う。

クリードがボクシングをしているとこもしていないところも基本、画になるだけにそういうカットの数々と、いわゆるファンライクな過去作オマージュカットとのバランス、融合も凄くよくて最高だった。6作品で積み上げてきた涙腺刺激ポイントをガンガンに刺激してきて泣ける場面がめちゃ多かった。あからさまじゃなくて程よく泣かせにきているところもたまらん。

ミッキーを彷彿とさせるロッキーの魂の言霊たち、セコンドとしてのパンチラインも凄く良かったし、アポロを思わせるクリードの闘い方や彼自身の背負っている重圧、恐怖がきちんと現れていてグッときた。「自分は過ちではないと証明する」というラストヴァースと彼の表情にロッキー4を重ね合わせた瞬間のカタルシスがあった。ロッキー・ザ・ファイナルでスタローンの物語がきちんと終わっているのも凄く大きかった。だからこそのセコンド、一人の人間としてのロッキーの魅力と彼自身の「ファイト」へのフォーカスも無理がなく納得のいく展開だった。

現代版ロッキーとしてリニューアルされていたのが音楽と映像だと思う。映像は過去作のテイスト(TV中継テイストのものを流す、スローモーションの使い方、フラッシュバックのさせ方)をしっかり継承しながらも現代映画としての流れるようなシークエンスの移り変わりや視点の切り替えなど飽きさせないようにきちんと新しいエッセンスを加えたものになっていた。ボクシングシーンの迫力も素晴らしかった。音楽もHipHop、ブラックミュージックをテイストとしてしっかり入れ込んだ上で、オールドファンが喜ぶあれやこれやも馴染むようにアレンジをした上で混ぜ込んでいた。ロッキー5でやりたかったアングラ感、音のテイストは本当はこっちだったんじゃないかなとか思ったり。パブリックエネミーとかを使えてたら5ももっと怪作になってたかも。

「自ら」を「証明」するための戦いがしっかりとアドニスに継承され、新たな歴史が幕を開けたと思う。
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