140字プロレス鶴見辰吾ジラ

エイリアン:コヴェナントの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

エイリアン:コヴェナント(2017年製作の映画)
4.0
”瑠璃色の地球”

はてさてこの夏話題となりました「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」。リテラシー的に酷評はどうか?と思う意見もあるわけなのですが、個人的に嫌いでない作品です。その中でも広瀬すずが声を当てるヒロインが松田聖子の「瑠璃色の地球」を歌う場面があるのですが、そこを愛おしく思うのです。傑作的な演出力があるわけではないですが、そこにクリエイター側の”体温”を感じられるから好きなのです。それこそ「売れる」作品にしよう!という緊張感やストレスから外れたクリエイターの”体温”や”コンプレックス”が漏れ出てくるような場面が好きなのだと思います。

さて今作「コヴェナント」は…

宇宙の果てまで行ってQ!!
カオス!パニック!阿鼻叫喚のすってんころりん大暴走!大爆発スペシャル!!
の如き爆笑ハプニング大賞みたいなシーンがある”ズンドコ”映画的肌触りにに頭を抱えてしまう場面が連発されます。

「こいつら頭悪くね?」

確かにそう思いました。

しかしこの
「エイリアン」シリーズは

1作目、リドリー・スコット
2作目、ジェームズ・キャメロン
3作目、デビット・フィンチャー
4作目、ジャン・ピエール=ジュネ
と様々なクリエイターにより料理され、初代のリドリー・スコットが世に送り出した「エイリアン」が作品の進化により塗りつぶされていくことに、リドリー・スコット自体の怨念のような、体温のような意地が乗り移り、「プロメテウス」から再始動し、古き神話やオペラ楽曲の引用し、さらに自身の傑作「ブレードランナー」の世界観の投影までやり、何か開放感のあるクリエイターとしての”体温””コンプレックスの流失”が、商売至上主義的な映画から漏れ出てくる感覚が堪りません!

私は「エイリアン:コヴェナント」好きです!

リドリー・スコットが80歳の老体で描く、ジェームズ・キャメロンから、ダン・オバノンからギーガーからあらゆるエイリアンに関わった創造主またはエンジニアたちを自身のコンプレックス剥き出しに皆殺しにしようというような”クリエイターの黄昏”が、正しい判断でないにせよ、「正解」と思える信号を劇中の「カントリーロード」のように受信したわけであります。