シュローダー

エイリアン:コヴェナントのシュローダーのレビュー・感想・評価

エイリアン:コヴェナント(2017年製作の映画)
5.0
僕はこの映画大っ好きですね! 本当に素晴らしい。何が素晴らしいって、まずはもう圧倒的な視覚情報への飽くなき拘り。全シーン 全カットが彫刻や絵画のように美しく、撮影 ガジェット 美術 演技 そして血飛沫までもが完璧な化学反応を引き起こし、芸術へと昇華させている。リドリースコットでも「ブレードランナー」を初めて観た時の感覚を思い出した。そして、この映画はそのブレードランナーと同じく"目"のクローズアップから始まる。目の主は前作「プロメテウス」でも登場したアンドロイド デヴィッド 彼が訝しげに見つめる彫刻は「"David" ダビデ像」即ち、旧約聖書で巨人を打ち倒し王となるダヴィデが、デヴィッドと重ね合わされている。この様に、この映画は説明の全く無い引用のオンパレードである。特に唸らされるのは「オジマンディアス」の詩の引用によって、デヴィッドの肥大化したエゴを表現すると同時に、その詩の作者のシェリーの妻 メアリーが書いた「フランケンシュタイン」ともリンクさせる部分。非常に簡潔ながら効果的なシーンであるのは言うまでも無い。前作から続いて人間たちは揃いも揃ってバカな行動を取るが、未開の惑星に宇宙服も無しでピクニック気分で着陸すると、呆気なく死んでいくのが非常に心地よい。残酷描写の容赦の無さは、まるでホルモン屋の冷蔵庫の在庫をありったけ床にぶちまけたかの様なものであるのも、とても好ましい。美術がどれも寒色系で統一されているからこそ、鮮血の赤がこれ以上なく映える。そして、何よりも最高なのはラスト。「悪魔」が「天使」を殺し、高らかに勝利を収め、祝福が与えられる。ワーグナーの「ヴァルハラ城への神々の入城」をバックに。これは、地球を支配していた巨人と神々が没落していく様を表現した曲であるが、それは即ち「今からお前ら創造主(エンジニア)と神(人間)は堕落していくぞ!」という意味になる。デヴィッドの野望を考えれば、何という意地悪で最高の幕引きであるか。総じて、リドリースコット監督作の中でも、「悪の法則」と並んで大好きな一作となった。ダメじゃん! という意見も分かるのだが、僕は惚れ込んでしまった。ちょうどリメイク版「サスペリア」の様に。