ちろる

山の音のちろるのレビュー・感想・評価

山の音(1954年製作の映画)
3.9
「つまり湖と激流の違いですね。」
と飄々と呟く旦那の冷淡さよ。
小姑、夫からの菊子に対する心無い言葉たちがキリキリ痛む。
ってかなんなの?このモラハラ男。
耐えて耐えて耐えまくる菊子の姿はいじらしくあるけれど、さめざめ泣くだけでは幸せになれないのに。
不幸な身の上を享受するだけの菊子はこの時代の嫁の美しき嫁の姿なのだろか?

不倫をして後ろめたい夫は文句も言わずに笑顔に迎える菊子にイラつく。
父に大切にされなくて、帰省したのに追い出される房子も父に可愛がられる義姉 菊子にイラつく。
人間相性っていうものがあって、血が繋がってなくてもぴったりに居心地がいい関係というのはある。
菊子が心からケタケタ笑うのはいうもお義父さまといるときだけ。
2人で乗る電車のシーンで菊子が「お父様と一緒にいたいんです」は少々艶っぽ雰囲気が漂いすぎるが、本当に菊子にお義父様がいなければとっくに壊れてしまっていたのと思う。
けれど、義父は自分の存在が菊子を不幸に縛り付けてしまったと思うまでの思いやりの深さには泣いた。
人の心がわかる立派な父親と、冷淡に育ったクズ息子。
川島雄三監督の「風船」で感じたなんとも言えない構図がここにも。

血は繋がらないが親子にも近い深い愛情関係があるのに、親族でもなくなればなかなか互いに会うこともできないと分かるから、切なさが込み上げてくるエンディングも遣る瀬無い。