森泉涼一

人の望みの喜びよの森泉涼一のレビュー・感想・評価

人の望みの喜びよ(2014年製作の映画)
3.0
震災によって両親を亡くした兄弟がどう生きていくか、苦悩と葛藤を描いたヒューマンドラマです。今作で長編映画デビュー作となった杉田真一監督。彼が実際に体験した阪神淡路大震災の体験が基となっていることもあり映画だからという楽観的な考えで見過ごすことはできない。それは、ストーリーの中で見せられる被害にあった地や兄弟が新たな生活を送る上での苦悩が生々しく物語っている。
主役は小学生の姉・春奈とまだ幼い弟・翔太の2人兄弟。この映画で一番のポイントとなるのが親のありがたみを知らぬまま残された兄弟がどう生きていくか。周囲の人間との関係や環境の変化に気丈に振る舞っていた春奈は小学生ながら頼もしく見えるが、その心はもろくすぐに崩れる。そして親の生存を信じ続ける翔太にどう真実を告げるかという悩みにも直面するように。
映画として観ると決して良作とは言えない。撮影も遠くから撮影し、人間のみならず周囲の景色も取り込んだ全てを見てほしいという監督の意図が随所に見られる。だが短い上映時間でこの手法を幾度と使用されると飽き飽きしてくるのも当たり前。出演しているキャストもフレッシュなメンバーが揃っていることもあり全てを含めて今後に期待という所だが、今作に至っては被災者の本当の気持ち、特に発育期に直面する子供たちがどう考え、どう悩んでいるかの見本にしてほしい映画である。
森泉涼一

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