亘

彼は秘密の女ともだちの亘のレビュー・感想・評価

彼は秘密の女ともだち(2014年製作の映画)
3.5
【友人の繊細な秘密を守れるか】
クレールは、親友ローラを亡くして悲しみに暮れていた。そんな彼女はローラの夫ダヴィッドの元を訪れる。彼もまた悲しみに暮れてるかと思うと家で待っていたのは女装した彼の姿だった。

主人公クレールは、偶然知ってしまった親友の夫の秘密に驚きを受けながらもそれを受け入れ最後には自分の秘密まで知ってしまう。ハプニングに必死にダヴィッドと協力して対処することで妙な連帯感が生まれる姿はコミカルだったけど、あんなに受け入れがたいというような感じだったのに女装に対する抵抗を消して彼女が次第に態度を改めるのは驚きだった。

クレールは、ダヴィッドの家を訪れると長髪の女性らしき人物がいる。声をかけるとなんとダヴィッドが女装していたのだ。ダヴィッドはもともとひげが濃くて男性らしい見た目だから違和感がある。クレールも少し嫌悪感を示すんだけど、ローラの母の来訪に2人で対応してダヴィッドの女装癖を隠そうと協力する。そしてダヴィッドは、なんとクレールに女性物の服の買い物同伴をお願いする。実は彼は女性の服が大好きなのだ。クレールに嬉々としてローラの服を紹介する。

クレールからすれば驚きの連続なんだろうけど、クレールもファッションが好きらしくどこか楽しそう。女装したダヴィッドに[ヴィルジニア]と名付けて女友達のように接するのだ。でも彼女自身もLGBTについて自分なりに勉強したらしいし徐々に女装に受け入れ始めたということなんだろう。クレールとヴィルジニアは2人で旅行にも行くしゲイバーにも行くのだ。

2人はヴィルジニアを[秘密の女性]を隠し共犯のように見えて、あまり進展が内容だけど、状況が変わるのはクレールが自らの秘密を知ってから。ダヴィドはジェンダー(心の性)が女性のトランスジェンダーで恋愛対象が男性になったかと思えば恋愛対象は女性。一方でクレールは、ジェンダーは体と同じく女性つまりシスジェンダー。でもヴィルジニアとのやり取りから恋愛対象は同性なのだと判明する。「女装ならゲイのほうがまだマシ」と初めは女装とか同性愛に怪訝な目を向けていたのにいつしか彼女は、自分も同性愛だと気づくのだ。

ダヴィドが事故にあってからクレールは、ダヴィッドのことを案じていたとともにヴィルジニアの帰還を待っていたように見える。そして退院後クレールは夫ジルと別れヴィルジニアとの人生を歩むのだ。確かに夫ジルはまだ女装とかに対する偏見を持ってそうだし同性愛にも多少偏見を持ってそう。省かれても仕方がなかったのかもしれない。7年後のクレール、ヴィルジニア、リュシーの3人家族はふと見ると違和感があるかもしれないけど、3人が歩く後ろ姿は幸せそうだった。

印象に残ったシーン:クレールが女装したダヴィッドに出会うシーン。クレールとヴィルジニアが買い物をするシーン。クレールとヴィルジニアがセックスをしようとする場面。7年後のシーン。
亘