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劇場版 ムーミン谷の彗星 パペット・アニメーションのぴのレビュー・感想・評価

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いささか誇張されすぎたキャラクター、どんよりとした色彩への違和感は単純に日本版ムーミンに慣れてしまっているためである、ということに気づく。

そもそもムーミンはどこか湿っぽい物語であるのだ。もともと小説としてのムーミンが執筆されたのはちょうど第二次世界対戦の頃であり、ヨーロッパでも例に漏れずあらゆる著作物が検閲されていた。そこで原作者のトーベヤンソンはムーミントロールという妖精のおとぎ話を書くことにしたのだ。まだムーミントロールがムーミントロールになったばかりの頃、『小さなトロールと大きな洪水』では、いたるところに鬱々たる表現が散見される。チューリップの妖精やおかしでできた魔法の庭など典型的なファンタジー要素がある一方で、ムーミンママとムーミントロールの冒険のきっかけは〝パパの失踪〟である。この作品を含め小説9作品、全ての物語がハッピーエンドではあるが、ところどころ湿っぽいのだ。

しばらくしてからトーベヤンソンの弟、ラルスヤンソンが小説をもとにムーミンをコミック化する。この頃には初期の陰鬱とした描写はほとんどなくなり、終始ハイテンション、家族愛や友情、人生観といったベーシックなものはもちろん、ユーモアに富んだシニカルなテーマも扱われるようになる。これは日本で最も馴染みのあるアニメ『楽しいムーミン一家』にも通ずるところが多々ある。

長々と述べたが、つまりわたしたちはこの上澄みの部分に慣れてしまっている、もしくはそこしか見たことがないゆえに違和感を覚えてしまっているのだ。本来フィンランドではこのムーミンというおとぎ話はおとぎ話であるがある一定の澱を含むものとして捉えられているのではないだろうか。

吹替版で見ちゃった!ウッカリ
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