まつこ

あえかなる部屋 内藤礼と、光たちのまつこのレビュー・感想・評価

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※個人的には豊島美術館に行かれてから観る方が伝わるように思います。

「生」を感じるとても詩的でスピリチュアルな作品。

結論から言うと求めていた作品ではなかったのだけど、冒頭のやりとりで監督の目指したものも違ったのだろうなぁと思った。

内藤礼さんのドキュメンタリーではなく、監督が「母型」と向き合った作品かな。

私がこの作品を観たいと思ったのは、また母型に包まれたいと思ったからだ。行った人なら必ずそう思える場所。監督もそんなひとりだった。

母型は、母体の中のような不思議な空間。

「生まれることの奇跡。
つくることと生きることの区別できない危うさ。」
そんな言葉がよく似合う場所。

私が行ったのは夏の日差しが降り注ぐ快晴の日だった。

ジリジリと火照るのにひんやりと感じる母型の中で揺れる雫を見ていると私の心も吸い込まれていきそうだった。

生命を繋ぐ臍の緒ような白いリボンに虫たちの存在。ここで四季を感じたい、ここにずっといたいと思わせられる。

はじめてなのに懐かしい。
でも、優しいだけじゃない。
儚さとさみしさとあたたかさが同居しているような、透明と白をマーブルにしたような世界。

寝そべって空を仰ぐと涙が溢れそうになった。

自然に帰れそうな気がするのに生きている限りは還れない。
息を止めても呼吸を感じ、沈黙を貫いても無にはなれず、閉じ込めても煩悩が浮かび上がる。

それでも、真空になれたかのような、自分を手放したかのような感覚になれた。

ああ、また豊島に行きたい。

言葉の不完全さに踊らされ、わからないふりも、わかったふりもしている私たち。
掴めないものこそ実体で、意味を求めるから迷子になるのかな。

映像や言葉で語るには難しい題材だけど、内藤礼さんの心に沁みる感じが伝わればいいな。

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