映画の道化師KEN

アリスのままでの映画の道化師KENのネタバレレビュー・内容・結末

アリスのままで(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

記憶、それはかけがえのないもの…

監督は「コレット」のリチャード・グラツァー。主演は「逃亡者」のジュリアン・ムーア 。その他には「ディパーテッド」のアレック・ボールドウィン、「エージェント・ウルトラ」のクリステン・スチュワート、「バトルフロント」のケイト・ボスワース、「ペーパーマン PaperMan」のハンター・パリッシュらが共演!

ニューヨーク、コロンビア大学で教鞭をとる50歳の言語学者アリスは講義中に言葉が思い出せなくなったり、ジョギング中に自宅までの道がわからなくなるといった事態が続く。やがて若年性アルツハイマー症と診断され、家族の介護もむなしく、アリスの記憶や知識は日々薄れていく。そんなある日、アリスは記憶が薄れる前に自らパソコンに残したビデオメッセージを発見し、自分が自分でいられるために画面の中の自分が語ることを実行しようとする。

全米ベストセラー小説「静かなるアリス」を映画化。この作品は言語学者のアリスを通して生々しい認知症の症状が描かれていく。最初は人の名前や言いたい言葉が思いつかないところから始まり、徐々に家族の顔、場所の認識、感情すら薄れていく。最早、悲劇の物語と言っても過言では無い。大逆転劇の展開も無く、虚しく時が過ぎていくので感情移入しやすい人にはかなり厳しいかもしれない。しかし、認知症の怖さや家族の関係が大きく変わってしまう部分を現実的にすることで本作を見ている人も他人事ではないと、警鐘する演出は見事。私自身が介護士の経験もあってか普通に会話していた人が別人に変わっていく寂しさは思わず共感できてしまうものがある。

人生で築いてきた知識、キャリア、思い出が無くなっていく中で、少しでも自分らしく生きようとし続けるアリスの生き様には感動させられる、そんな、映画だ!