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アリスのままでのEditingTellUsのレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
3.8
March 2nd

Julianne Moore主演作品。
2015年アカデミー賞主演女優賞受賞作品。

どうしてわたしだけ。
若年性アルツハイマー病と診断されたアリスは、その病気が治らないという事実、50%の割合で子供に遺伝するという事実の前に突然立たされる。これからの人生、今まで編んで来た思い出が少しずつ消えていく。自分の子供の名前さえも思い出せない状況になる。この悲劇とも言える事実の前で、一人の女性として、一人の母親として、一人の人間として、自分でいつづけることに人生を捧げた。

Julianne Mooreの演技がやはり光る作品。もちろん彼女自身は演技をしていて、実際にアルツハイマー病にかかっているわけではないのだが、映画の中でのAliceは、彼女そのものだった。少しずつ記憶が薄れていくという症状、その症状に抗えない自分に対する怒り、それを抱えきれなくなり、はけ口を最愛の家族に向けてしまう、そのすべてが最高の演技だった。
Kristen Stewartもまた、今までに見せなかった娘としての素晴らしい演技を見せた。思春期を少し超えて、自立を迎えた娘が、兄弟、両親、自分と向き合う姿は、主役になり得る輝き。

技術的な面で、撮影は特に悪いところもなく、目立った印象もなかった。一人の主人公を中心としたドラマだから、会話のシーンがとても多く、そこでの手法に注目すると、少し遊びが足りなかったと感じた。基本的に流れは一緒で、会話が進むにつれて、少しずつフレームがタイトになっていく。
会話のシーンは遊びが効きづらいシーンでもある。変なことをしすぎると、重要なスクリプトがないがしろになってしまう。そんな会話シーンで、監督の奥深さが見られる。Quentin Tarantino監督なんかは、重要なシーンでの工夫の加え方が尋常じゃない。いろんなテクニックと遊び心が詰まっていて、それなのに視聴者に感じさせたいことは離さない。

編集もまた、近年よく使われる方法を多く取り入れた、きちんとした編集だった。ここでも会話シーンに注目してしまったのだが、編集の中で一番難しいのが会話シーン。実際に編集者がストーリーテラーとならなければ、全く違った印象を与えてしまう。1フレームの違いで、俳優さんのいい演技を捨て去ってしまう可能性もある。今作でいうと、悪くはなかった気がするが、スクリプト自体が専門用語など多く難しいため、どこがベストタイミングなのかを一回見ただけで判断することは難しかった。

でも、とにかくいい作品ではある。家族というテーマで大きく広げすぎずコンパクトにまとまっていた。
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