最初に褒められたのは、作文だった。
次に褒められたのは、詩だった。
読書感想文も褒められた。
文章を書くのは昔から好きだった。
だいたい書き出しの一行か、
最後の一行の言葉がポンと出てきて、
あとは言葉が勝手に溢れ出てきた。
だけど、ここのFilmarksのレビューは、
すぐに書けないことに最近気付いた。
自分の経験、それは嬉しかったこととか、
痛みとか、孤独感とか、心が軽くなった時に
とか、いろんな記憶の上に、僕の書く
文章が出来上がっているからだと思う。
人生で本当に大切な瞬間は、
自分でも気付かないほど、
何気ない瞬間に訪れたりする。
それは、本当に耳をすませて、
目を凝らしていないと、
見逃してしまうものなんだと思う。
スケジュール帳に書かれたことや
SNSで発信するものよりも実は重要で、
例えばひそかに自分が好きな映画を
好きな女の子が好きと言ってくれりとか、
大切な人と同じタイミングで同じ言葉を
口にした瞬間とか、
子供の頃初めて見た海の広さや怖さ、
砂浜の熱さや道の先に海が見えた瞬間とか。
人を生かしているのは心臓でなく、記憶だ。
この映画の主人公のアリスが
それら全ての記憶を忘れてしまうかは
分からない。
だけど、全てを忘れてしまうのは悲しい。
せめて、姉と行った砂浜の砂の感触は
覚えていてほしい。せめて。
とにかくジュリアン・ムーアが素晴らしい。
繊細で自然で、抑えた演技に引き込まれて
しまう。なんと言うリアリティー。
そして音楽が素晴らしい。シーンに対する
音楽の入り方も素晴らしい。
アリスや、この病気に苦しむ人と家族に
気遣うような音楽の入り方が実に優しい。
