アリスinムビチケ図鑑

アリスのままでのアリスinムビチケ図鑑のレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
3.8
Netflixで鑑賞。

今年の6月からFilmarksを始めて、
やっとレビュー100作目に辿り着きました♪

何の映画のレビューを書くか悩んだ末に、
私のハンドルネーム(アカウント名)のアリスに因んで、"ジュリアン・ムーア"主演の
"アリスのままで"をチョイス。


ある日突然、記憶が抜け落ちるかの如く、言葉が失われたら、
単語が抜け落ちたら、
貴方はどうしますか?


物語はアリスの50歳の誕生日、
家族との幸福な時間から始まります。

大学で教鞭を執る聡明で美しい言語学者のアリスの身に突然それが起こります。

走り慣れたキャンパス内をマラソンするアリス。
自分のいる場所が分からなくなり、
恐怖を覚えます。

不安に思い医師に診せると、若年性アルツハイマーと診断され、
子供達に遺伝の可能性も有ると知り、
ショックの為、動揺が抑えきれません。

大切な記憶を失ってしまったであろう未来の自分に宛てたビデオレター。

小学2年生の時に"蝶の命は短命"と先生が言った言葉。
そんな事無いと怒るアリスに母が、
"でもね、蝶はとても美しい一生を送るのよ"
言ってくれた思い出。
まるで今の自分の様だ、と蝶に重ねるアリス🦋

ビデオレターを収めたファイルが"butterfly file"なのも切なく響きます。

また、"自分達はそれでも生きている。
瞬間瞬間を生きているのです…"
と病に侵されながらも気丈にスピーチをするアリスに心を打たれます。


もし、将来自分の身に若年性アルツハイマーが降りかかって来たらどう感じるのでしょう。

今まで積み重ねて来た大切な思い出が、
両手からこぼれ落ちて行き、
数分前の記憶すら無くなって行く事は、
あまりにも哀しくて、とてつもなく大きな不安に押しつぶされそうになるでしょう。

自分の行動が自分で管理出来なくなったり、
知らない内に約束を破ったり、
誰かを傷付けたり、
哀しませたり、
怒らせたり…
自分が自分で無くなる様な、
歯痒くて、でも歯痒いと思った気持ちすら分からなくなったり…。
遣り切れない感情に囚われてしまいそうな気がします。

ましてやアリスは優秀な言語学者だった訳で、言葉に関しては第一人者。
研究を重ね、誰よりも言葉の大切さ、重みを分かっている人物。
その彼女が失語から始まった不安と恐怖たるや、
想像を絶するものだったのでしょう。

瞬間瞬間を切り取るかの如く意識がはっきりして良い時と、悪い時が目まぐるしく変わり、
雲の上の様なふわふわとした安定感の無い毎日の中で、
その1秒1秒を大切に生きているアリスの素晴らしさ、
それを献身的に支え続けた家族の愛の深さに感銘を覚えました。


人は名誉だったり、見栄だったり、欲望だったり、羞恥心だったり、言語だったり…
様々な鎧を身に着けて生きています。

それが1枚1枚剥がれ落ち、
最後に残るのがきっと感情なんだと思います。
全ての人の最後に残った感情が
穏やかで優しい"愛"であると信じたいと心から願います。


ジュリアン・ムーアの素晴らしい演技に拍手を送りながら、
100作目のレビューを終わりにしたいと思います🦋

アリスが最後までアリスのままであり続けた様に、
私も私らしいレビューを、これからも書き続けたいと思っています。