NAOKI

アリスのままでのNAOKIのレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
3.8
「私…最近…アルツハイ子でね…もうひどいものよ」

アルツハイ子…
おれと同世代の女友達が昔からよく言う自虐ギャグだ…
度忘れが激しい彼女がそう言うとみんなでゲラゲラ笑ってたものだが…最近みんなも物忘れがひどくなってきて冗談ではすまなくなってきた…

同世代が4~5人集まってお喋りなんかしてるともう大変…
「私さぁ…若い頃金持ちと付き合ってたことがあって…家の前まで迎えに来るわけよ…レミオロメンみたいな車で…」
「アルファロメオだな」
「誕生日にはケイト・ブランシェットみたいな指輪よ!」
「ハリー・ウィンストンだな」
「あんたたち!一文字も合ってないじゃん…どうして分かるの?」
「付き合い長いからなぁ、老夫婦みたいなもんだよ」
ほとんど連想ゲームである。

まだ本物のアルツハイマー出てないから不謹慎に笑ってられるけど…こんなおれたちなのでこの映画は怖い怖い…

やはり兆候が現れる発端部分が怖いですね…
話してて単語が出てこない…
ジョギング中にどこにいるのかわからなくなる…
大事な約束をすっぽかす…

「癌の方が良かった」
…とアリスが言うシーンがあって胸を締め付けられます。
例えば精神病なら周囲は大変でも本人はなにもわかりません…ヘタしたらハッピーかも…
頭から記憶がどんどん消えていくというのはアリスのように教壇に立つような人に限らず人間にとってどんなに恐ろしい病か?

もうどんなホラーよりも恐ろしい。押さえた演技なのに滲み出る「不安」と「怖れ」…

娘とケンカする…ケンカしたことを忘れる…娘を怒らせたと思って謝る…すると娘の方が謝る…どうして謝るの?

もうこの辺からなんか知らんが涙が止まらなくなる…

記憶は古いフィルムと撮影カメラの揺れとピントで表現される…悲しいが素晴らしい…

「もう、この人の演技が凄すぎて号泣だよ」
「誰?」
「ほら…えっと…あの…『トゥモローワールド』でクライヴ・オーエンとピンポン玉ポッポッってした人…ハンニバルでジョディ・フォスターに変わってクラリス演じた…ほら!」

「そんな細かいこと覚えててなんで名前が出てこない?『ジュラシックパーク』でハエ男と一緒に出てた人?」
「そう!いや…違う…あれはローラ・ダーンだ」
「ねぇねぇハエ男って誰だっけ?」
「待てよ!今はアリスが先だ…えーとほら『キングスマン』の続編で人肉ハンバーガー作ってた人だよ!えーとえーと💦」
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