ショウコ

アリスのままでのショウコのレビュー・感想・評価

アリスのままで(2014年製作の映画)
3.8
こういうデリケートな話は原作を読んでほじくり返すに限る

「もし自分が若年性アルツハイマーになったらこんな扱いをして欲しい」の理想型を描きつつ、発症メカニズムや当人の苦悩への理解を世間に訴えようとしている映画。そうか…遺伝性とは知らなかった

本人目線ってのが素晴らしいですね!軽い物忘れに始まり、短期記憶から家族の顔まで分からなくなっていく恐怖は耐えがたいもんがあります。しかも輝かしいキャリアを積み、大学で教える立場でまだ50歳となれば死ぬより辛いでしょう

世話をする家族の目線で描かれる映画は良くあるし、その多くは人間と言うよりモンスターの様に表現される。でも認知症のおばあちゃんもこんな気持ちで脳の衰えを感じ、消えていくものを逃がさない様に踠いてるのだと知っていればそんな酷い事は出来ないハズだ

家に認知症の祖母が居て、介護してる母の姿を見て育った私ですら2人とも人間に見えなかった(母は天使か何かに見えた)もんです。いずれ自分がワケ分からなくなる時の心の準備、シミュレーションとしても観る価値のある作品です




が、プロットがブツ切りで「現象の羅列」ばかりだし人物に聖人しか居ないのが気になった。キレイ事を並べてて肝心の現実が見えないんだよねー。ラストもぼんやりしており、踏み込んでいる様でそうでもなかったりする

んで原作を読んでみたところ、既に仲の冷め切っていた旦那に打ち明ける時点から苦悩(主にプライド)がもの凄いし、奇行をする妻の姿を見たくない旦那は仕事からなかなか帰って来なくなる。同僚たちの態度が一変したり哀れみをもって接せられたり…など、胸をエグられる様な「世間の冷たい風」がしっかり書かれていた。だからこそスピーチの場面は読んでて涙が溢れて止まらなかった(映画では何故みんな拍手してんのかピンと来なかった)

ちなみにジャケのブレスレットは、米アルツハイマー協会から配布されたもので身元確認用のナンバーが刻印されています。説明されなきゃ分かんないってばよ

…と、意義は大きいけれど隙も多い。認知症というものに接した事が無い人をビビらせない様に配慮でもしたのかな
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