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ボーダーラインのmahのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
3.4
終盤に差し掛かるまでずっとわけがわからない。
途中から物事を理解できるようになるのだが、上辺だけで理解しているような感覚になる。
なのに観入ってしまう不思議な体験をした。


FBI捜査官ケイト・メイサーは、麻薬カルテルを殲滅するための特別捜査班に派遣される。
事態を把握できないまま進んでいく作戦と、己の価値観や正義を揺るがす出来事にどう向き合うか苦悩していく。


主人公であるケイトが、ずっと作戦の全貌が分からないまま進んでいく。自分が居る意味も分からず、何の作戦なのかも分からない。
当然観客である私もずっとわけがわからない。よく考えれば分かる話ではあるが、観てる最中は本当にわからないまま不安。
観客の気持ちをケイトが代弁してくれることで、かろうじて作品と自分との距離を保てていたような気がする。
そのさじ加減が絶妙。

不安を煽る音楽や、皮肉ともなる美しい空、映像、カメラワークが本当に素晴らしい。シルエットで映し出される部分も抜かりなく美しい。
ドゥニ・ヴィルヌーヴの表現力と引き込む力に飲まれた感覚。


冒頭の説明をしっかり覚えておくと、ラストで結局何の話だったのか、というのが飲み込める。
邦題で『ボーダーライン』となってはいるが、原題の『Sicario』の方が納得できる。
確かに善悪の判断に飲み込まれていき、ラストシーンのあの判断にこそ『ボーダーライン』が反映されているのだが、私は原題の方が納得できたなあ。
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