KANA

ボーダーラインのKANAのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
3.7

『灼熱の魂』以降のヴィルヌーヴ監督の代表作、これでやっとコンプ!

メキシコの麻薬カルテル対CIAの血生臭い現実。

いきなりの大量拷問死体にギョッとする。
そしてフアレスという危険極まりない街での非道な描写。
エミリー・ブラント演じるケイトは手段を選ばない国の思惑に翻弄される感じで、見ててとっても頼りない。
でも考えてみれば彼女は性善説を信じたい一般人の投影のような気がする。

そしてその主役ブラントを食う圧倒的存在感のベニチオ・デル・トロ。
やはりあの目つき、ヤバすぎ!!
これは彼あっての作品と言っても過言ではないと思う。

ジョシュ・ブローリン出演の映画もそれなりに観てきたけど、私の中ではいまだに『グーニーズ』のブランドなんだよね。
それにしても強面俳優として厚みが出てきたなぁ。

ロジャー・ディーキンスによる地獄を見渡すような俯瞰映像と
ヨハン・ヨハンソンによる不気味なサウンド効果。
この映像と音こそが緊張感や絶望感や虚無感を最大限に引き立てていて、そこに美すら感じる。

正義のため、秩序を取り戻すための悪。
そしてそれに便乗するように個人的な復讐心を昇華させるSicario(暗殺者(原題))。
そこにヒロインのヤワな倫理観が踏み入る余地はない…
なんか自分の中で、日本中を震撼させた某カルト集団の思想や顛末とも重なっていろいろ考えさせられた。
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