なんだこの映画は?
冒頭から不穏さと、ド派手さと、残虐さが一気に爆発する。
映画が始まってすぐにもう、この映画のトーンが決まってしまう。
静かに、しかし苛烈に人の死が転がっている。
本作とは全く違うストーリー、違うルックであるにもかかわらず、死の描き方や不穏なムードは北野武監督の「ソナチネ」を思わせる。
とにかくその死のムードに乗せて、前半はとにかく音楽から画面から、脚本の構成(大事なことはしっかり先に伏線張っておく)などとにかく魅力に満ちていて、映画という表現の高度さに感心する。
そして充分なサスペンスと世界観を見せた果てに映画は反転し、ベニチオ・デル・トロの存在感によって急激にアクションが加速する。
そして一見主役かのようなエミリー・ブラントは常に「え?え?何?何々?」という常に困惑していている表情で画面の不穏さをより高めていたと思う。
ラストシーンのエミリー・ブラントと、ベニチオ・デルとのやり取りに関してはもう実に映画的感情の高みに至ってしまうとか、双方の尊厳を巡るこれらの議論は、非常に映画を観るということの最良のテキストであり、本作が傑作としての技術的高さに驚かされるのみで圧倒的な迫力だった。