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ボーダーラインのおーたむのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
3.9
メリー・ポピンズ・リターンズを見てエミリー・ブラントの作品を、と思ったわけではないけれど、見てみました。
エミリー・ブラントのことだけで言えば、全然役柄が違いました。
もっとも、違い過ぎたので逆に、メリー・ポピンズ・リターンズのイメージが壊れたりはしなかったですが。

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品では、「メッセージ」を見たことがありますが、「メッセージ」同様、冷たい質感の映像は、キレイで良かったです。
エモーショナルな演出が徹底的に排されている点と合わせて、映画としての品格を感じさせる作品でした。
ただ、そういうクールさで、このストーリーを、しかもリアリティ満点でやられると、けっこう重いです。
特に前半、主人公が参加させられる作戦は、何が目的で何をやってるのかさっぱり分からず、徐々に不安感と緊張感が高まっていく感じが、息苦しかったです。
後半になると、主人公格がデル・トロ演じる謎のコロンビア人になりますが、この人が、まあまた重いのなんの。
キャラクターの持つ背景の陰惨さと、デル・トロの酸いも甘いも噛み分けたような複雑な存在感が、お腹にきます。
個人的には、話の面で言うと、女主人公の捜査官が作戦に連れてこられた理由あたりの方が、コロンビア人の事情よりも面白かったなと思ったんですが、デル・トロの異様な迫力に押されて、結局最後まで見させられてしまいました。
見ごたえのある作品だったと思います。

しかし、なんとも気の毒な主人公。
正義なんか何の役にも立たず、蚊帳の外に置かれたまま、あのラストを持ってこられたら、無力感で立ち直れませんよ。
続編に彼女がいないというところが、さらにまたかわいそうというか。
まあ、こういう徹底した姿勢や、湿り気の無い空気感が、本作を高品質のノワールにしていたとも思いますけど。
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