ゆーさく

ボーダーラインのゆーさくのレビュー・感想・評価

ボーダーライン(2015年製作の映画)
3.7
タコスとアミーゴとサルサソースの国メキシコは遥か彼方に消え失せて、
この作品で描かれるメキシコは残酷で無秩序で、狼だけが生きる事を許されたディストピア。


麻薬カルテルと汚職警官と、ちょっといい肉屋で売られてる鶏肉みたいに吊るされた首斬り全裸死体がこの国の名物。


俺のいとこの新婚旅行がメキシコやったけど、この映画観てたら行き先変わったと思う。


「化け物には化け物ぶつけんだよ」って「貞子VS伽椰子」の安藤政信が言ってたけど、それに倣ってこの映画では、「カルテルにはデルトロぶつけんだよ」みたいな感じ。

化け物みたいに膨れ上がって手が付けられないメキシコ麻薬カルテルをぶっ倒すためには化け物みたいな顔面迫力のベネチオ・デルトロにやってもらうしかない。

この映画のデルトロはカリスマ性抜群。

熊みたいな体躯と無言の圧力と、でもちょっと優しそうな目をしていて、でもヤると決めたら家族持ちのポリ公も瞬殺する冷酷さの持ち主。
「目的のためなら誰とでも組む」っていう設定もカッコいい。ルパンでいうたらゴエモンの立ち位置。

しょっちゅうエミリー・ブラントが独りよがりな正義を振りかざしてピーピーさえずるけど、デルトロの前ではとにかく無力。
ラストでなにか一泡吹かすんかな、と思ったけど最後まで無力やった。

それがいい。正しい事が必ずしも効果的とは限らない。ルール無用の人たちにルールに縛られながらでは戦えない、という現実を突き付ける。


ジョシュ・ブローリンはまったく情報を共有しない不親切野郎。後ろで見とけ、しか言わないでやんの。ハズレ上司みたいなヤツやわ。


BGMの「ブーウーウゥゥン」っていう重低音がめちゃめちゃ不穏煽ってて良かった。作曲のヨハン・ヨハンソン死にましたね。。。惜しいことに。

国境沿いでてんやわんやする話やから、今ここアメリカ?メキシコ?どっち?ってなりがちやけど、面白かった。
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