こたつむり

エスコバル 楽園の掟のこたつむりのレビュー・感想・評価

エスコバル 楽園の掟(2014年製作の映画)
3.6
最凶の麻薬王に翻弄された青年の物語。

《パブロ・エスコバル》。
コロンビア最大の麻薬密売組織“メデジン・カルテル”の創始者であり、一時期は上院議員にも就任。全盛期には“世界で七番目の大富豪”と称され、今でも一部で“英雄”と敬われる人物。

その壮大な規模の経済力は。
自身が収監される刑務所を自分で作ってしまうほど。ちなみに、その刑務所にはサッカー場やディスコなどが存在したそうです。しかも、《エスコバル》本人は買い物などで自由に出入りできたとか。もう刑務所でもなんでもないですな(全てウィキペディア調べ)。

そんな麻薬王《エスコバル》を演じたのは。
名優ベニチオ・デル・トロ。
実在の人物を演じるために“太目”の身体に仕上げたのはプロの極み。納得の存在感です。

しかし本作は、そんな彼を直接描くのではなく。
彼の姪の恋人《ニック》が《エスコバル》に翻弄される物語。これは脚本の方向性として絶妙でした。主人公《ニック》の視点と観客の視点が上手く重なって、《エスコバル》の底知れぬ“怖さ”がビンビンと伝わってくるのです。

例えば、ある一面では。
病院を自費で建設したり、パーティで“愛の歌”を高らかに歌い上げたり、子供たちとプールを遊んだり。その和やかな顔は、どこからどう見ても慈善活動に励む“家族思い”な富豪。

しかし、違う一面では。
敵や裏切り者を冷酷に処分する麻薬組織のボス。
天に唾を吐く“神をも恐れぬ姿”は、まさしく“凶器”。凡庸な一般人では太刀打ちできない“怖さ”があるのです。

まあ、そんなわけで。
とてもよく出来た映画でしたが、正直なところ、主人公である《ニック》が《エスコバル》の存在感に喰われたと感じました。でも、これは仕方ないですよね。相手はベニチオ・デル・トロですからね。目を細めて口を真一文字に閉じられたら…もう、それだけで膝が震えますよ。ガクブルですよ。

最後に余談として。
鑑賞後にウィキペディアで調べたら、《エスコバル》の生前の写真だけではなく“死体の写真”まで掲載されていました。しかも、その写真が“記念写真”の態であることが、コロンビアの闇の深さを感じた…とか書くと偏見になるのでしょうか。でも…コロンビア怖い…。
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