あまのかぐや

グレイテスト・ショーマンのあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

Based on True Story。実話ベース。
19世紀、「エンターテインメント」の礎を作ったP.Tバーナムの伝記を「ラ・ラ・ランド」の作曲陣の作った音楽にのせて送るミュージカル映画。

オープニングがものすごくかっこいい。音と歌とヒューのシルエットとタイトルクレジット。ここを見る限り「ラ・ラ・ランド」を越えてる?!と震えた。

しかし今回のヒュー様はあまり聖人君子ではなかったですね。
ヒュー様本人と、あと近年の当たり役であったジャン・バルジャン、そしてウルヴァリンのせいか、どうしてもヒュー様には完全無欠のヒーローな人柄をみてしまう。

主人公バーナムは、お金持ちの家に出入りしてはいるけど貧しい仕立て屋の息子。
そこで知り合った令嬢チャリティ(ミシェルウィリアムス)と、相思相愛、初恋を実らせて親の反対を振り切り、駆け落ちのように結婚。なんのかんので、バーナムの上流階級へのコンプレックス、お金への執着が、「家族の幸せを」という綺麗事に見せかけるも、実は彼の原動力って、…

健常者と見た目の違う人たちを集め、いわゆる「フリークス」を飯のタネにする。要は見世物小屋ってやつですよね。バーナムによってスポットライトを浴び、拍手喝采のあび、居場所をみつけたと活き活きするフリークスたちの姿も、ショーアップされてキラキラ見せていたけど、考え方によってはゲスの極みですよね…。

唯一、深みがありそうでなさそうで、あったのは、バーナム一座が英国女王謁見中に知り合ったスウェーデンの歌姫の歌唱シーン。レベッカ・ファーガソン美しかったぁ。彼女も歌うんだ!(と思ったら歌は別の方だったようで)彼女のパフォーマンスもバーナムにとっては飯のタネだし、みてろよ上流!の裏返し。

そんなコンプレックスだらけの、「幸せ」の衣を着た野望とお金が最優先の小さいぺてん師の目を開かせたのが、バーナムが憧れ、なりふり構わずめざしてきた上流から降りてきた妻と相棒であるというね…。

バーナムの描く幸せ、フリークスたちの幸せ、北欧の歌姫の幸せ、チャリティの幸せ、娘ちゃんたちの幸せ、ザックとゼンデイヤカップルの幸せ…

目指す方向みんなバラバラなんだけど。…歌でガチっとひとまとまり。これでオッケー(なのかな?)

「幸せのかたち」っていろいろなのね、と、総括してしまうと元も子もないのですが、そんな感じなお話でした。あっさり。

「もっとも崇高な芸術とは人を幸せにすることだ。by P.T.バーナム」

オープニングで魅了されるまま「さてはこれってヒュー様劇場?」「はいはいはい、すごいすごいすごい」とだんだんひねくれモードになりながら観ていました、正直なとこ。

ミュージカル映画であるから、そんなに個々のキャラクターに深みはなく、バーナムに飯のタネにされる(ひどいよね、つくづく)フリークスたちも至極あっさりと描かれている気がしましたし。

なんかこう…苦悩も懊悩も葛藤もないまま、シュルシュルとはなしは進み、御都合主義な匂いもなきにしも…

それでもヒューさま演じるバーナムの軽さ無頓着さは、ゲスさを軽々と消し去っていたし、ゴージャスでエネルギッシュで耳に残る楽曲は、ストーリーの深みのなさを力づくで忘れさせた。

(ひとでなし野郎)バーナムに見限られたフリークスたちが雪の路上に飛び出して熱く高らかに歌う「This is me」では、泣きながら心がスタディングオベーション。これぞ非の打ちどころがない、エンターテインメントな絵面なんです。だったんです。文字通り、諸手を挙げてブラボーですよ。この場面でサントラ即買い決定です。(アカデミー賞でパフォーマンスあるかな)

この「This is me」がいわばミュージカルならば第一幕のラストを飾る曲だったのですね。そこからはヒュー様の映画ではなく「バーナムカンパニー」の映画に切り替わった感じ。

ほんっとに耳が幸せ、目が幸せ。魂が震える至高のエンターテイメント、至高のパフォーマンスっていうの?それってこういうこと。1800円でこんなの見せてもらっていいの!?とひれ伏すばかりです。

ハイスクールミュージカルや、ヘアスプレーなどで、キラキラしていた若かりし日のザック・エフロンが懐かしい。彼の起用も適材適所。サーカスの女曲芸師ゼンデイヤの吸い込まれそうな瞳と御曹司で若き劇作家ザック・エフロンのロマンスは、なんとミュージカル的な素材か。

つか、近年、あまり目立つ役、あたった役もない気がする彼が輝く場にもう一度引っ張り出してくれた感があるし、ラスト、テント小屋でのショーのシーンでシルクハットを彼に引き継ぐバーナムのシーンが、なんだか象徴的で、やっぱりヒューが演じるとこんな下司な詐欺師も聖人になってしまうというマジックかな…。
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