鋼鉄隊長

グレイテスト・ショーマンの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
2.0
TOHOシネマズ梅田にて鑑賞。

【あらすじ】
19世紀半ばのアメリカ。貧しい生まれであるP.T.バーナムは、裕福な家庭の娘チャリティと結婚する。しかし、中々安定した生活を送ることができない。そんなある日、バーナムは変わった仕事を始める…。

 この映画はとてもズルい。楽しい所だけしか見せていない。
 ほとんどのミュージカル映画は明るい話が多い。この作品もそれには漏れず、冒頭からいきなり夢のあるショーの映像で、観客を引き込む。20世紀フォックスのロゴが映る序盤の序盤から、1曲目の音楽「The Greatest Show」が流れる演出にはワクワクした。その他にも、演劇プロデューサーのフィリップを酒場で勧誘する場面では、ミュージカルでありながらも、ギターの軽快なBGMの中で西部劇のような男同士の戦いが見られて素晴らしい。物語の重要な局面を歌とダンスで盛り上げることにおいては、非常に優れた作品である。
 しかしその一方で、物語のカゲとなる部分は徹底して描かれていない。ここが最大の問題点となる。つまり、作品のテーマがボケてしまっているのだ。そもそもこの映画の題材となったP.T.バーナムは、奴隷を見世物にしたりした過去から考えて、現代の倫理観では褒められた人間では無い。そのような経歴の人物を主人公として描くとなると、自然と「黒人奴隷」や「マイノリティ」などの存在をどのように描くかといった問題が発生する。本来はこれらが作品のテーマとなるはずだ。にもかかわらず映画では、それらの部分は意図的に排除され、家族愛と言った当たり障りの無いテーマが描かれている。そのために、良い意味ではテンポ良く、悪く言えば中身が無いと思われるほどに、物語はサクサクと展開されている。
 このように、カゲの部分を削り取った結果、不気味なほどに明るい作品になっていることがわかる。音楽がかかればそれなりに面白いが、そうで無い場面は観なくても問題が無いほどに何も描かれていない。ミュージカル映画としてはそれでも良いのかもしれないが、史実を取り扱う伝記映画としては最悪の内容である。このことが終始気になってしまい、純粋に楽しむことが出来ず、非常に後味の悪い作品であった。
鋼鉄隊長

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