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グレイテスト・ショーマンのYuのレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
3.7

“地上でもっとも偉大なショーマン”と呼ばれた実在の人物、P.T.バーナムの半生を元に描いたオリジナルミュージカル。

映画製作というのは、つくづく沢山の人による努力と才能の結晶なのだなと思い知らされる。

劇中、バーナムと衝突をし続けている批評家との会話が、今作の評価をまさしく象徴している。

バーナムのショー、つまりフリークショーは芸術ではないと批判する批評家に、バーナムはこう言う。
当たり前だ、これは芸術なんかではない、
観てくれた人々に笑顔と喜びを与えるのが
素晴らしいショーなのであると。

正直、脚本は矛盾だらけでボロボロだし、演出も上手じゃないからサーカス感が物足りなく、フリークス1人1人の素晴らしさは皆無だ。
人物の深掘りは薄いし、心情の変化も浅いから物語の展開に納得感が無く、皆が皆お互いを、その時その時で利用しあってるだけの予定調和な茶番劇に見えてしまう。

ただ、そんな違和感を無視してでも、心が動かされ何度も観たくなる作品が今作だ。

そう、敢えて言うまでもなく、
観たもの全てが絶賛してやまない、主要演者たちによる歌と音楽とダンスがあるからだ。
それらは今作で最初から最後まで輝きを放ち、素晴らしいメッセージを伝えている。

個人的には
レベッカ・ファーガソン演じるジェニー・リンドの神々しいまでの美声から始まり、キアラ・セトルらによる”This Is Me”、ザック・エフロンとゼンデイヤの空中浮遊しながらの“Rewrite The Stars”。
この3曲の流れは素晴らしかった。
その後の、
観る前からイチ推しだったミシェル・ウィリアムズの”Tightrope”も、子煩悩に描かれていたはずのバーナムが追いかける子供達を無残にも見捨てるシーンをもっと上手く描いていれば、間違いなく休むことなく心震えたことだろう。

もちろんそれ以外の歌も歌自体は完璧すぎて聴いていて感動しかない。

でもやはり傑作だとは思えないし、いい映画かと聞かれたら困ってしまう。

観始めてまもなく違和感を抱いたのは、フリークスを見世物にして金稼ぐことを”肯定的”に描いてること。
観てる間ずっと、ジョゼフ・メリックの悲しい人生を描いたデビッドリンチの「エレファントマン」を思い出して心苦しかった。
ただ、時代は1800年代。
デビッド・リンチが描いた通り、当時は見世物小屋が流行っており、ジョゼフ・メリックの追い求めた幸せまでは届かずとも、世の中の”普通と違う”フリークスは胸を張って輝ける場所を手に入れ、幸せを抱くことができたのは事実だ。

まさに、キアラ・セトルらによる”This Is Me”は、自ら自分たちを認め戦いその存在価値を世界に示した、神がかった名曲である。
観客の中には、この力強い名曲と共に、彼らの栄光が陽の目を見ることを期待する人もいたかもしれない。
ただ、そんな彼らが自分たちの家をもう一度と目指した先は皮肉なことに史実通り”テントの中”。

バーナムは1800年代を生きた、愉快なホラ話を得意にしたアメリカの興行師で、サーカスの発展に大きく影響を与えた人物。
160歳を超えているという黒人奴隷女性や
親指将軍トムを見世物にし、世界各地を巡業、イギリスではヴィクトリア女王とも面会した。
その後、スウェーデンのナイチンゲールと呼ばれた歌手ジェニー・リンドを容赦ないツアー運営で連れ回し、更に大金を稼ぐ。
サーカス事業ではテントと列車を使った興行ツアーを考案し、ジャンボと呼ばれた巨大な象は中でも1番人気だったという。

そんな彼のダークさを軽くし家族愛に焦点をあて、脚本を再考案したのが今作だが、数々の名曲のもつ素晴らしさを増幅し、最高傑作にするものではなかった。

劇中でバーナムが、芸術よりも、観客が喜び多幸感に浸れればそれが1番だと言っていたが、こんなに好きなのに”大好き”にさせてくれなかった無念さははかり知れない。

でもあのミュージカルシーンを楽しみに
何度も何度も観てしまうんだろうなぁと思うし、事実3回観に行った(^^)笑
ある意味、史上最高のMV集シネマだろう✨


ちなみにかなりの余談だが、
事前にサントラ鬼聴きしてて大好きだったのはTightrope。
でもスクリーンで観た時はNeverenoughとThisIsMe。
レベッカファーガソンに激しく恋に落ちそうだったけど、やはり本人の歌声じゃなく心の整理未だつかず。
つーか今作はみんな先に歌を録音した後の口パク演技だろうから良しとしたい
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