ストーリーは、元にしている人物がP.T.バーナムなので賛否あるだろうとは思う。けれどこの作品の力はそんなものではなくて、ミュージカル映画としての圧倒的なパワーと、それを魅せきるだけのパフォーマンスがヒューさま、ザック氏を始め全キャストによって惜しげもなく披露されていたことに尽きる。また、アカデミー賞の歌曲賞がこれを抑えての『リメンバー・ミー』ということなので、そちらへの期待感も高まった。
「Never Enough」の圧倒的な歌唱力も勿論だが、何より「This is Me 」が暫く離れなくなる。レティ役のキアラ・セトルの芝居が、歌は力強く歌詞も勇ましいのに、何処か瞳の奥に今まで隠れて生きていたが故の恐怖や怯えが見え隠れするようで、複雑なキャラクターを歌唱含め素晴らしく演じていた事がとても印象に残った。
ミュージカル作品の見せ方として、最高だったのではないかと思う。冒頭のバーナムの半生を一曲に詰め込み、それを違和感なく観客に流し込むカメラワークも、最後、再びチャリティへ真摯に想いをぶつける海でのシーンに、若かりし頃身に纏っていたドレスと同じ鮮やかなブルーが、スカーフとして登場する構図も、ありきたりではあるが魅せきる力があった。
何よりヒューさまとザック氏のバーでの掛け合いが最高。そして二人の動きに絶妙な合いの手を入れるバーテンも素敵。
定期的に観たい作品がまた一つ増えてしまった。
