すごく今更感あるけど……次々と大作が公開されるなかでロングラン続けているので、さすがに観ておくかと思った次第。でまぁ正直、少年時代の初々しい恋から新婚さんがボロアパートの屋上でクルクル踊っているあたりがピークだったけど、映画というよりMV集だと思えば１つ１つが印象に残るように違った味付けがされていて、非常に満足のいく作品だった。
狭い（そう見えるだけ？）エリアで大人数が踊るシーンが多い。純粋な舞台芸術との違いは、もちろん空間に遍在できるカメラの存在によって明らかだ。つまり、一見ごちゃごちゃしている全体（森。想定された観客席の視点）、そのなかの特定の人物や動き（木）、さらに客（大衆であれ特定人物であれ）の反応、これらのそれぞれに自由に観客を注目させることができる。画面に情報が溢れかえっているものだから、リピーターが多いのも頷ける。
また、動線や手、目の向きを使った視線誘導も巧みで、アトラクションの乗り物みたいにスイスイ運ばれていく感じ。脇役カップルのデュエットでは、２人きりというギャップに加えて高低差の激しい運動で他との差別化に成功していて印象深い。擬似的に同ショット内で時間・場所がジャンプするテク（名称ある？）も何度となく一役買っている。これによって歌いながらストーリーを前進させられるし、観客を飽きさせない。
ストーリーは単純明快なのは当然かつ必要。ミュージカルによって尺は圧迫されるうえ、歌によって喚起される感情は単純であるべきだから、おのずと展開も分かりやすいものが求められる。堅物の劇評家が慰めにやってきて野暮な話をするのが白けること以外は気になる点もなし。それにしても、この手の野暮い説明セリフで白けさせられる映画の多いこと。そんなに観客って馬鹿なんですか。
