こゆるぎさん

グレイテスト・ショーマンのこゆるぎさんのレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
4.5
19世紀に実在した興行師の挫折と成功を描くミュージカル。作品の魅力は、まず第一に、ミュージカルの演出、楽曲や歌唱、ダンスのクオリティの高さ。迫力。劇場で音楽体験したかった。この話は身体的なマイノリティの人たちをを見世物にするという、まあ悪く言えば"めんどくさい"設定なんだけど、最初から最後まで、重要なシーンは全て歌のダンスのシーンで構成されていることで、会話や状況を説明する描写をうまく短縮している。その是非は別として、エンタメミュージカルなのでね。

次の魅力は、ショーの世界なんて、しょせん、お金を稼ぎたいペテン師が大衆の好奇心を刺激して作っているもので、それは階級や差別が厳然と、あからさまに存在していた19世紀も現在も基本的には変わらないよね、というメッセージ。主人公は五体不満足な「フリークス」を見世物にして成功していくが、彼らに暮らしの場と自己承認の場を与えている。このあたりに何の抵抗もない描かれ方をされているから、むしろ良い。(かつて日本でも流行った「小人プロレス」の人たちは差別反対主義者から仕事を奪われた、なんて話がありましたね)
7年かけて作ってきたそうで、"ショーマン"であるトランプやワインスタインを否定するハリウッドのセレブのこの状況で出てきたというのも面白いですね。

そして、作品内で「評論家」批判をしていて、主人公は上流(芸術を愉しむ階層)に認められたいんだけど、いろいろあって、まあ最終的には自分のやっていることは大衆娯楽でいいんだと腹をくくる。上流はフリークスの曲芸はおろか、サーカスや、今でいうと野蛮で下品なプロレス、あるいはサメ映画なんかやっぱり見ない、というか、評価すらしないわけじゃないですか。それはそれでいいんですけどね。で、この映画が実際米国での公開当初は現地の批評家の評価は低かったけども、ジワジワと口コミから人気が出て売れていったそうで、結局その結果がそのまま作品で言っていることを立証しちゃったというか、映画がコケてたらキッツイことになってたわけで。そこが興味深かったですね。

いろいろ書きましたけども、まぁ全体的にご都合主義的なところはあるものの、ハッピーなミュージカル映画としてとても良く出来ていると思いました。