りっく

グレイテスト・ショーマンのりっくのレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
3.5
サーカス団率いる実在のショーマンを描いた本作のテーマは多様性である。肌の色や異形の存在(フリークス)として社会から虐げられていた者たちをユニークと称し、晴れ舞台で自己の存在を公に示し尊厳を獲得する。それはやはり現トランプ政権への強いメッセージであろう。

だがヒュージャックマン演じるショーマンは決して善い人間ではない。社会や階級へのコンプレックスを抱えた彼は、自己承認欲求の塊であり、類い稀なるは上昇志向の持ち主である。現状維持や安住を嫌うからこそ、上流階級の中でくすぶっていた劇作家を引き抜き、天使の歌声を持つ歌手とアメリカ中を横断する。

一方でその犠牲や代償も大きい。演者は金をもうけるための商品に過ぎず、ハッタリをかけて人類の祝典をどのように打ち出し売り込むかを考えている。家族の心も徐々に離れていってしまう。おまけに劇場は全焼し、歌手とのスキャンダルをでっち上げられる。

その全ての要因は、商品だと思っているそれらは人間であり、心を持っていることをおざなりにしているためだ。それにようやく気付いた彼は、ザックエフロンにサーカス団を任せ、自分はパートナーとして第一線から退き家族の時間を大切にする選択をする。

ミュージカルナンバーに彩られたショーは見世物である。そして映画もまた現実から虚構の世界に連れて行く見世物である。だからこそ、本作の感動は過去と現在を繋いでいる。

しかし一方で、特にヒュージャックマン演じるキャラクターの心の葛藤や変化の過程が見えないため、物事があれよあれよと唐突に進んで行く感は否めない。レミゼラブルやララランドと比べるのは酷であるが、長編初監督ということもあり演出やストーリーテリングの雑さは否めない。
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