神戸典

グレイテスト・ショーマンの神戸典のレビュー・感想・評価

グレイテスト・ショーマン(2017年製作の映画)
5.0
極上のエンターテインメント。
もはや映画として視覚・聴覚的刺激を与えるだけでなく、実際にサーカスを見ているように心が震えた。
キャストの技術も実際にサーカスで行なっているからできるのだろう。
それに加えて多彩なキャストを活かした生歌での心の掛け合い。
ミュージカル映画はセリフを歌に乗せすぎて軽く聞こえてしまったり、飽きてしまうことがあるが、この作品は歌が非常に良い。その為それらの懸念点は一切気にせずに楽しめるものになっている。
贅沢すぎる一本に仕上がっている。

ヒュー・ジャックマンは『レ・ミゼラブル』での実績があるためミュージカルは流石の
演技。さらに彼の人情や愛情が湧き出てくるような表情は『リアルスティール』での親子愛を思い出させた。
ザック・エフロンは貫禄すら感じるほどの安定感のある歌声。
彼もまた表情が多彩で、彼の演技を見るのは2回目だが、もっと見てみたいと思う魅力を持っている。

サーカスを成功させるが次第に欲が出る。
なにもかもが崩れ落ちたバーナム。
失ったものは富、名声、安定。
しかし残ったものもある。
友情、愛、誇り。
最も大切なものを再認識したバーナムは周りのサーカス団からも受け入れられ、再びショーを立ち上げ成功を収めた。

ストーリーとしてのポイントは
妻のチャリティは身分の高い生まれだが、大切な人と一緒にいる事が幸せであると考えていた。
バーナムは貧しい身分だがそれ以上に夢を見て豊かに育った。しかしいつのまにか嫌っていた上流貴族に好かれようとしたり、考え方が同じになってしまい、大切な存在を蔑ろにしてしまう。

フィリップは上流の育ちで劇作家としていわゆる「本物」を作ってきた男だが、サーカスの仲間との出会いでそういった偏見を取り除き、一人一人心で見つめることができるようになった。

それぞれが育ち方に型を決められずに成長し、大切な人との繋がりを手にするが、それが元々持っていたバーナムと後に手にしたフィリップのように立場が逆になるというのが対照的で伝えたい事がわかりやすくなっていた。
友情や愛情、誇りというものは目に見えなくとも大切な事であるとわかる。
しかし、それを常に意識して生きている人はいないのかもしれない。
時に忘れてしまったり、手に入れてしまうと別のものを求めてしまう。
人生の岐路に立ったとき、何かが大きく変わる時に目に見えない大切な事を思い出そうとできるような人間になりたい。

作中の小人症の男や終盤にバーナムが乗って登場する象は実際にバーナムの助けとなった親指トム将軍とアフリカ象のジャンボを意識しているのだろう。
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