Utopia

ネオン・デーモンのUtopiaのレビュー・感想・評価

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)
4.4
モデル業界を舞台に、美醜にとらわれた業深い人々を映し出すスリラー。

人を惹き付ける特別な美しさを武器にモデルを目指して田舎町から出てきたジェシーが主人公で、生い立ちや家族などの重要なバックボーンは大きく語られることは無い。彼女にあるのは美しさだけだ。寝泊りするモーテルのものむなしさがそれを語る。

魅了的なルックスはモデル業界に現れた彗星のごとく、頂点に近づいては並居るライバルたちを蹴落とす。魔都LAの夜景を一望できる丘で夢を語るジェシーは無垢な少女でありながらも、ランウェイで覚醒する彼女はまるで獣のように獰猛で鋭い目付きをしている。人が変わってしまったのはジェシーのみならず、モデル業界に住まうひとたちも同質で悪夢のように禍々しい。美しいがゆえにもたらす残酷な展開は見るものの胸に深く突き刺さる。

レフンといえば居間まで難解な演出が目立った印象ではあったが、今回は珍しくシンプルなアプローチ、悪く言ってしまえば陳腐な語り口が見受けられた。がそれはある意味エンタテイメント映画にあるような大衆さであるのかもしれない。

そして何より賞賛されるべきはヒロインを体現しきったエル・ファニングであろう。物語の持つ異常性や変態性を、寓話に昇華したのは彼女の可憐さあってのものだった。
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