回想シーンでご飯3杯いける

ネオン・デーモンの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)
1.5
バリバリのお洒落映画、しかもちょい耽美が入っているビジュアルで、あまり得意ジャンルじゃなさそうだったので後回しにしていた。実際に観てみたら、その予想を更に下回る映画だった。

台詞を減らして音楽や映像美でイメージを構成していく手法を取り入れているのだろう。その方向性自体は良いのだが、スローモーション多用でリズム感が壊れて、映画を感覚的、体感的に楽しむ事が出来ない。監督自身が、出演者の美しさや映像美に陶酔し過ぎてしまったのではないだろうか。

予想以上にグロ表現が多い事については、まあ別に良いと思う。いや、本来はここも気にするべきポイントなのだろうけど、先に書いた映画としての基本構造の問題が深刻なので「まあ別に~」としか言えないのだ(笑)

そもそも本作はお洒落なのだろうか? ケバケバしい色彩とスローモーション、チープなアナログ・シンセによる物憂げな音楽は、'70年代後半のDavid Bowieやデビュー当初のDuran Duran辺りのMVを劣化コピーしただけのように見える。それを21世紀に何の捻りも無く再生する事がお洒落なのだろうか? モデル業界を自己顕示欲や枕営業と言った下世話な切り口でのみ語る本作からファッションやカルチャーに対する理解や敬意を感じるのは難しく、どう考えてもお洒落とは言い難いように思う。

そして、本作のエル・ファニングは果たして美しかっただろうか? 彼女の美しさは、所謂スーパーモデル的なそれではなく、プリミティヴで非予定調和的な造形と佇まいにあると思う。本作でも「純粋さ」という表現で、他のモデル達との差別化を表す台詞がチラッと出てくるが、その部分がストーリーの前面に出ておらず、他のライバル達が何故彼女に嫉妬するのか?という部分が伝わってこない。ビジュアル的な「美しさ」ではなく、モデル業界の常識を天然キャラでぶち壊していくような無軌道さを描いた方が、映画としては面白くなったと思う。