狭須があこ

ネオン・デーモンの狭須があこのレビュー・感想・評価

ネオン・デーモン(2016年製作の映画)
3.3
可愛く生まれた女の子って、男で例えれば勇者なんですよ。
伝説の剣を引き抜いた勇者。
ただ「そういうふうに」生まれてきたことを、スゴいことを成し遂げたかのように、ちやほやされる存在。

でも「伝説の剣を抜く」ことって、実は「結果」ではなくて、「はじまり」なんですよね。一生を、「剣を抜いた」功績のみで食べていくことはできないワケで、そのあとは自分で、地道にレベルをあげて、目的に向かって生きてくワケです
スタートがちょっと「特別」だっただけ。

でもみんな、人生の基準って、自分だからね
生まれた時から「特別」だった人間が、「普通」になったらどうしよう?なんてことは、考えないんですよね。
私たちだって、「ある日手足がなくなったら?」って未来は考えず、口で物を持つ練習なんて、せずに生きてるじゃないですか
彼女は生まれた時から「特別」だったので、自分が生きていく道はその「特別」な道だと思っている。

その考え方が、残念ながら「普通」なのです

伝説の剣を抜いた勇者が「おれスゲー!」ってなって、無策で、一人で、いきなり魔王のいる城に乗り込んだとしたら、生きて帰れますかね?
「特別」な人間は確かにスタートが人より優れてはいるけれど、「特別」を運用できる力があってこそ、その人は「特別」としての道で生きていけるのだと思うのです。

「私、可愛い」
それは確かな事実だったとしても、その伝説の剣の使い道を知らないままで、ただ振り回して進んでいけるほど、世の中甘くはないんだよ、ジェシー。
可愛さって、わりとしたたかに運用しないと、舵取りできねぇんだよな。

そんで、「自分よりも可愛いモノを消すことで自分がいちばん可愛くなる」って発想もまた、可愛いモノの発想よなぁ。
整形にしろ、化粧にしろ、可愛さで頑張る方法って限界あるんですよね。しかも天然モノがいいなんて言われて、どう頑張ればいいんだよな!

そう考えたら、努力で実力の底上げができる世界って、なかなか生きやすいと思いますね
こんな、生まれつきのモノを評価されて、まっとうな努力の意味がない世界、キツすぎるでしょ。下手にこんな世界に入れる容姿に生まれてこなくてよかったわぁ…努力しただけ認められる世界で、頑張ろうと思います。

しかし後半とかもうワケわかめでした
前半はまぁそこまで気にならなくて、山猫で「!?」ってなったくらいですけど、完全に異世界。モデル業界コワすぎでしょ
こうやって、ファンタジーとなって飲み込まれていった「特別」たちは、星の数ほど居るんだろうなぁ…
狭須があこ

狭須があこ