アキラナウェイ

トゥルー・ストーリーのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

トゥルー・ストーリー(2015年製作の映画)
3.7
ジェームズ・フランコとジョナ・ヒルが揃った時点で、「ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日」という超おバカ映画が脳裏をよぎったけど、こちらはおちゃらけ無しのシリアスなヒューマンドラマで御座いましたで候。

ニューヨーク・タイムズの記者であるマイケル・フィンケル(ジョナ・ヒル)は、期せずして捏造記事を書いてしまい、職を追われる事に。そんな折、妻子を殺害した容疑で逮捕されたクリスチャン・ロンゴ(ジェームズ・フランコ)がマイケルの名を騙っていたと知り、マイケルは彼への獄中取材を始める—— 。

何故、彼は自分の名を騙ったのか?
その理由は?目的は?

崖っぷちに立たされた記者と
殺人の罪に問われた容疑者の対峙。

深まる謎…。

前述の様に、コメディ俳優枠と言っても過言ではない彼らの、おちゃらけた芸風を完全封印した迫真の演技に惹き込まれる。

ゾッとする恐ろしさが確かに在る。

ジェームズ・フランコが時折見せる、其処には何も映らない空虚な瞳が心底恐ろしい。

マイケルのライターとしての才能を称え、彼から文章の書き方の指南を受けるクリスチャン。

獄中取材を続ける内に、心を交わしていく2人。彼が本当に罪を犯したのか否かがハッキリしない中で、観ている者も、マイケルと同様に、クリスチャンが信用に足る人物かどうかを見極めようと目を凝らす。

以下、ちょこっとネタバレに抵触しますので、未鑑賞の方はここでごめん遊ばせ。











クリスチャンの証言の中に出てきた、「娘はテディベアと共に旅立てる」という表現と「二重否定」というワード。

彼と対峙してきたマイケル(と観衆)だけが気付く違和感。

彼が、
嘘を、

つ い て い る … !!

という事実。

その瞬間、心が震えた。僕は一瞬でもクリスチャンを信用してしまっていたから。

マイケルの妻ジルを演じるは、フェリシティ・ジョーンズ。彼女がクリスチャンの元を訪れ、徐(おもむろ)に美しい曲を聴かせた後に語った、妻子を殺した作曲家の話も脳裏に焼き付く。クリスチャンを前に、真っ直ぐ見据える、ジルの鋭いその眼差しが印象的。

これが実話とは…。

そして2人がまだ会って対話を続けているという驚愕の事実に、更に虚しさを覚えた。