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パプーシャの黒い瞳ののんchanのレビュー・感想・評価

パプーシャの黒い瞳(2013年製作の映画)
4.2
パプーシャ(ジプシーの言葉で"人形"の意)と愛称で呼ばれた、実在したジプシーの詩人ブロニスワヴァ・ヴァイス(1910-1987)の伝記物語。

モノクロなのに画像がとんでもなく美しい✨
カメラワークにとてつもないセンスを感じた💫

冒頭、上空から捉えたロングショットの映像、中世ヨーロッパのような情景。弾んだ弦の響きでジプシー音楽が鳴る🎶
森や田園を走る馬車の列の風景。ジプシーがキャラバンを組んで旅する様子から惹き込まれる。

1910年、まだ少女のようなのに臨月のお腹。産まれた女の子をパプーシャだと幼げな母親が愛称として名付けた。

そこから突然1971年へシーンが変わり、ジプシーである彼女の存在と才能がポーランド国内で大きな波紋を呼んでいた。ある会場に呼び出されたのに、詩の朗読を拒む老いたパプーシャが映る。

その後は1920年代に遡ったり現在に戻ったりと自由に時空を超えた展開をする。時系列が入り混ざるのは、変化著しい生涯を印象付けるという意図なのか?

読み書きの文化を持たないジプシーとして生まれたが、幼い頃から文字に魅せられたパプーシャは、やがて才能を開花させてジプシー女性初の詩人となった。
その才能を見出したのは、2年間ジプシーと一緒に暮らしたポーランドの詩人イェジ・フィツォフスキだった。
彼との出会いと別れ、ジプシー社会からの追放など、激動の女性詩人の人生を描きながら、ポーランド現代史が透けて見えてとても素晴らしい内容だった。

とにかく美しい自然、ジプシーの生活様式は興味津々。気性は男女共に荒く、直ぐに喧嘩になったりする。あまりにも本物っぽいと思ったら、3人の役者の他は実際のジプシーらしい。通りで納得の見応えです。

ラストシーンは雪で凍てつく広大な大平原をジプシーのキャラバン隊がゆっくり遠ざかる。
ロングカットの情景にパプーシャの詩が重なる。


いつだって飢えて
いつだって貧しくて 
旅する道は悲しみに満ちている
とがった石ころがはだしの足を刺す 
弾が飛び交い耳元を銃声がかすめる
すべてのジプシーよ
私のもとへおいで 走っておいで 
大きな焚き火が輝く森へ
すべてのものに陽の光が降り注ぐ森へ 
そして私の歌を歌おう 
あらゆる場所からジプシーが集ってくる 
私の言葉を聴き
私の言葉にこたえるために
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