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パプーシャの黒い瞳のemilyのレビュー・感想・評価

パプーシャの黒い瞳(2013年製作の映画)
4.1
 ジプシー一族に生まれた少女ブロニスワヴァ・バイス(愛称パプーシャ)幼い頃から文字に興味を持ち、自然に詩を詠むようになる。15歳にして結婚、詩人との出会いと別れ、そうして彼女の詩がポーランド語に翻訳して出版にいたるまで、第二次世界大戦後の激動の時代に生きた女流詩人の半生を描く。

 モノクロで描かれるジプシー一族の移動に伴う風景美、どのカットにおいてもまるで絵画のような、立体感と繊細な色彩があり、そこに人々の心情がぶつかり合う。引きのカメラで描写する完璧な配置と光と影のバランス。そこに溶けるパプーシャの内側からこぼれる純朴な詩のさらに風景美に立体感を生を与えている。

 さらに活気を与えるジプシーたちの生演奏。閉鎖的なカメラと対照的な壮大な風景美。それはジプシーという民族の仲間意識の強さと、よそ者を一切排除する精神を言葉以上にカメラワークで見せてくれている。戦争の波はさらに民族を結束させ、異端児を排除することで自分達の世界を守ろうとする。

 いつだって受け入れるのは怖い。排除する方が簡単である。知らなければ不幸にならなかった。しかし運命には逆らえない。彼女には詩を綴る使命がある。言葉を書けなければ苦しまなかったかもしれない。しかし後に残る彼女の言葉は多くの人に多くのものを与えていくのだ。狭い世界を人は好む。それは私達だって同じなのだ。変化を求めながら、自ら拒否しているのだ。変化には必ず犠牲がつきものだ。誰かがその役をやらなくてはいけない。彼女の生きざまは力づよく、エンディングの雪景色の歌と共に、観客の心に大きなパワーを与えるだろう・・