【蘇るヒトラー】
ヒトラーを生み出してしまったドイツにおいてどのようにヒトラーを表象するか。ハンス=ユルゲン・ジーバーベルグはオペラを軸に、フッテージ、絵、人形などといった異なるオブジェクトを層のように重ねながら、空間を繋げ合わせることで多角的な側面を見出そうとする。このあまりにも異質な空間は、唯一無二の世界を生み出しており、悪魔的魅力に満ち溢れている。墓から蘇り、人形によって語らされるヒトラーと忘れることのできない強烈なヴィジュアルは、凶悪でありながら人々の関心を集め続けるヒトラー像を風刺しつつ、ミイラ取りがミイラになってしまうような危うさを持っている。何度でも復活し語られるヒトラー、その時に我々はどのように語るのか、どのように解釈するのかといった問いを突き付けてくる一本である。